業界ダイジェスト
日本電信電話株式会社 の会社詳細
日本電信電話株式会社
NTT
2025年度 通期

NTT・2025年度通期、純利益が3.7%増の1兆370億円——NTTデータ完全子会社化とデータセンター事業が成長を牽引

増収増益
NTTデータ
完全子会社化
データセンター
自社株買い
増配
金融事業参入
IOWN
生成AI
通期1年間の確定値(前年比)

売上高

14.4兆円

+5.1%

通期予想

15.1兆円

進捗率96%

営業利益

1.7兆円

+3.4%

通期予想

1.7兆円

進捗率100%

純利益

1.0兆円

+3.7%

通期予想

9,800億円

進捗率106%

営業利益率

11.8%

NTTが発表した2025年度(2026年3月期)の通期連結決算は、営業収益が前期比5.1%増14兆4,091億円、純利益が同3.7%増1兆370億円と増収増益を達成した。生成AIの普及に伴うデータセンター需要の拡大や、NTTデータの完全子会社化による機動的な事業展開が奏功し、増収増益を維持している。一方で、国内モバイル市場の競争激化やコスト増に対し、金融事業への本格参入やIOWN技術の社会実装を加速させ、通信一辺倒からの脱却を鮮明に打ち出した。

トーク

NTT 2025年度 通期決算

さくら × けんじ の対話形式解説

0:00

業績のポイント

2025年度の連結業績は、営業収益が14兆4,091億円(前期比+5.1%)、営業利益が1兆7,062億円(前期比+3.4%)、親会社の所有者に帰属する当期利益が1兆370億円(前期比+3.7%)となった。主力のモバイル通信事業で営業費用が膨らんだものの、海外のITソリューション案件や大規模なデータセンター事業の伸びが利益を下支えした。

当期はグループにとって大きな転換点となった。2025年7月に商号を「NTT株式会社」へ変更し、同年9月にはNTTデータの完全子会社化を完了。これにより、法人・グローバル分野における意思決定の迅速化を図り、成長分野への投資をグループ一体で推進する体制を整えた。また、住信SBIネット銀行を連結子会社化するなど、非通信領域での収益基盤強化が着実に進んでいる。

項目2024年度実績2025年度実績前年比
営業収益13兆7,047億円14兆4,091億円+5.1%
営業利益1兆6,496億円1兆7,062億円+3.4%
当期利益1兆0,000億円1兆370億円+3.7%

業績推移(通期)

売上高営業利益

セグメント別動向

全セグメントで増収を確保したが、利益面ではグローバル分野の好調と国内通信の苦戦が対照的な結果となった。

総合ICT事業(NTTドコモ等)は、営業収益が6兆4,581億円(前期比+3.9%)となったものの、営業利益は9,421億円(前期比△7.7%)と減益を余儀なくされた。「ドコモ ポイ活 MAX」などの新料金プラン投入による顧客基盤の維持・拡大に注力した一方、5G基地局の構築加速やマーケティング費用の増大が利益を圧迫した。今後は住信SBIネット銀行との連携による金融サービスの高度化が鍵を握る。

グローバル・ソリューション事業(NTTデータグループ等)は、営業収益が5兆46億円(前期比+7.9%)、営業利益は4,882億円(前期比+50.7%)と大幅な増益を達成した。国内外でのデジタル化需要を確実に取り込んだほか、データセンター事業が世界規模で伸長。NTTデータ完全子会社化による構造改革の効果も現れ、グループ全体の成長エンジンとしての存在感を示した。

地域通信事業(NTT東日本・西日本)は、営業収益3兆2,102億円(前期比+3.1%)、営業利益3,074億円(前期比+4.0%)と堅調だった。レガシーな電話収入の減少が続く中、光コラボレーションモデルの拡大や、AIを活用したオペレーション効率化が利益貢献した。

セグメント営業収益前期比営業利益前期比
総合ICT6兆4,581億円+3.9%9,421億円△7.7%
グローバル5兆46億円+7.9%4,882億円+50.7%
地域通信3兆2,102億円+3.1%3,074億円+4.0%
その他1兆7,526億円+1.5%△16億円
セグメント売上高構成比営業利益営業利益率
総合ICT事業6.5兆円45%9,421億円14.6%
グローバル・ソリューション事業5.0兆円35%4,882億円9.8%
地域通信事業3.2兆円22%3,074億円9.6%

財務状況と資本政策

総資産は住信SBIネット銀行の連結子会社化や有形固定資産の増加により、前期末から16兆6,588億円増の46兆7,213億円へと大きく膨らんだ。一方で、NTTデータの完全子会社化に伴う追加取得や配当支払いの影響で、親会社の所有者に帰属する持分(株主資本)は前期比4,940億円減の9兆7,276億円となった。自己資本比率は銀行業の連結により20.8%へ低下している。

株主還元については、積極的な還元姿勢を維持している。2025年度の年間配当は前期から0.1円増配の5.30円を実施。さらに、2026年5月に発行済株式総数の1.55%にあたる14億株、取得総額2,000億円を上限とする自社株買いを決議した。資本効率の向上と株主への利益還元を両立させる経営判断を下している。

通期見通し

2026年度(2027年3月期)の業績予想は、営業収益15兆600億円(前期比+4.5%)、営業利益1兆7,100億円(前期比+0.2%)を見込む。法人分野でのDX需要は引き続き強いものの、電気通信設備の老朽化に伴う維持費や、次世代技術「IOWN」への先行投資が利益を抑制する要因となる。純利益については前期のNTTデータ完全子会社化に伴う反動等により、前期比5.5%減9,800億円となる見通しだ。

項目2025年度実績2026年度予想増減率
営業収益14兆4,091億円15兆600億円+4.5%
営業利益1兆7,062億円1兆7,100億円+0.2%
当期利益1兆370億円9,800億円△5.5%

リスクと課題

会社側は今後の持続的成長に向けた主なリスクとして、以下の項目を挙げている。

  • 固定電話収入の減衰: 加入電話の利用減少が続いており、2035年頃には現行のサービスレベル維持が困難になる可能性を指摘。メタル設備から光回線・モバイルへの代替シフトを加速させている。
  • エネルギー価格の高騰: データセンターや通信設備の運用には膨大な電力が必要であり、電力価格の上昇は直接的な利益圧迫要因となる。これに対し、IOWNによる超低消費電力化が長期的な解決策として期待されている。
  • 競争環境の変化: 国内モバイル市場における楽天モバイル等の攻勢や、グローバルでの生成AI関連投資の競争激化がリスク要因となっている。
AIアナリストの視点

今回の決算で最も注目すべきは、NTTが「通信会社」から「グローバルIT・金融プラットフォーム企業」へと完全に舵を切った点です。NTTデータの完全子会社化により、世界的なデータセンターブームを直に取り込める体制となったことは、今後の利益成長において非常に大きな強みとなります。

一方で、ドコモを中心とする総合ICT事業の利益率低下は懸念材料です。住信SBIネット銀行を傘下に収めたことで、決済(d払い)から銀行・金融サービスまでを垂直統合する「経済圏戦略」がどこまで利益貢献できるかが、次の焦点となるでしょう。

投資家にとっては、2,000億円の自社株買いと増配の継続という「還元姿勢の強さ」は評価ポイントです。ただし、IOWNのような超大型の先行投資がいつ、どの程度のキャッシュフローを生むのか、長期的な視点での見極めが必要です。