業界ダイジェスト
日揮ホールディングス株式会社 の会社詳細
日揮ホールディングス株式会社
日揮ホールディングス
2026年3月期 通期

日揮HD・2026年3月期、営業黒字353億円に急回復——採算改善で通期純利益も過去最高水準、12円増配を発表

黒字転換
増配
V字回復
エネルギー
エンジニアリング
SAF
半導体部材
受注残高
資産売却
通期1年間の確定値(前年比)

売上高

7,453億円

-13.1%

通期予想

6,700億円

進捗率111%

営業利益

354億円

通期予想

400億円

進捗率88%

純利益

418億円

通期予想

460億円

進捗率91%

営業利益率

4.7%

日揮ホールディングスが発表した2026年3月期通期決算は、本業の儲けを示す営業利益が 35,399百万円 (前期は11,474百万円の赤字)となり、劇的な黒字転換を果たしました。海外の大型プロジェクトが相次いで完工し、前期まで重石となっていた採算悪化懸念が払拭されたことが大きな要因です。売上高は前期比 13.1%減745,280百万円 となったものの、受注案件の選別やコスト管理の徹底により利益体質が大幅に強化されました。

業績のポイント

当連結会計年度の業績は、売上高が 745,280百万円 (前期比 13.1%減 )、営業利益が 35,399百万円 (前期は 11,474百万円の損失 )、親会社株主に帰属する当期純利益は 41,842百万円 (前期は 398百万円の損失 )と、全ての利益項目で大幅な改善を見せました。

売上高の減少は、複数の大型海外プロジェクトが完工局面を迎えたことや、一部の新規案件で顧客側の投資判断が2026年度以降にずれ込んだことが響きました。一方で、経常利益は前期比 414.0%増58,188百万円 に達しています。これは持分法投資利益の計上に加え、為替差益が利益を押し上げたことによるものです。

特筆すべきは、最終利益が 41,842百万円 とV字回復を遂げた点です。持分法適用関連会社であった「水ing株式会社」の株式売却に伴い、投資有価証券売却益として約200億円を特別利益に計上する見込みであることも、純利益の積み上げに大きく貢献しました。

業績推移(通期)

売上高営業利益

セグメント別動向

主力である「総合エンジニアリング事業」は、売上高 679,588百万円 (前期比 14.5%減 )、セグメント利益 33,641百万円 (前期は 14,591百万円の損失 )と、赤字から脱却しました。海外ではモザンビークのFLNG(浮体式LNG設備)やサウジアラムコ向けの増設工事を受注した一方、金利上昇や建設資材の高騰を受け、一部の顧客が投資決定(FID)を先送りする動きが見られました。

「機能材製造事業」は、売上高 56,995百万円 (前期比 4.3%増 )、セグメント利益 7,676百万円 (前期比 6.4%減 )となりました。触媒分野ではアジア向けの石油精製用触媒が堅調に推移し、ファインセラミックス分野では生成AI市場の拡大を背景に、半導体製造装置向け部材の需要が好調でした。利益面では原材料費の上昇がわずかに響いたものの、高付加価値製品へのシフトが進んでいます。

セグメント名売上高営業利益前年同期比(利益)
総合エンジニアリング679,58833,641黒字転換
機能材製造56,9957,6766.4%減
その他8,6962,11312.2%減
セグメント売上高構成比営業利益営業利益率
総合エンジニアリング事業6,796億円91%336億円4.9%
機能材製造事業570億円8%77億円13.5%

財務状況と資本政策

財務健全性を示す自己資本比率は 51.2% と、前期末の49.8%から 1.4ポイント上昇 しました。総資産は現金預金の増加などにより前期末比 546億円増838,793百万円 に拡大しています。流動資産における現金預金は 4,004億円 と潤沢であり、不透明な外部環境下でも機動的な投資が可能な体制を維持しています。

株主還元については、業績の急回復を受けて大幅な増配を決定しました。2026年3月期の年間配当は、前期から 12円増配 となる1株当たり 52円 としました。配当性向は 30.1% となり、利益成長を株主へ還元する姿勢を明確にしています。次期(2027年3月期)についても、同水準の 52円 の配当を維持する方針です。

通期見通し

2027年3月期の連結業績予想は、売上高 670,000百万円 (前期比 10.1%減 )、営業利益 40,000百万円 (前期比 13.0%増 )を見込んでいます。売上高は大型案件の端境期にあたるため減少が続きますが、プロジェクトの採算管理をさらに徹底することで、営業増益の継続を目指します。

項目2026年3月期実績2027年3月期予想増減率
売上高745,280670,00010.1%減
営業利益35,39940,00013.0%増
親会社株主に帰属する純利益41,84246,0009.9%増
受注高目標478,0571,740,000264%増

リスクと課題

経営陣が注視すべきリスクとして、以下の要因が挙げられています。

  • 地政学的リスク: イスラエル・イラン情勢を含む中東地域の緊張緩和が見通せず、現地プロジェクトの安全確保や工期への影響が懸念されます。
  • コストインフレ: 世界的なインフレに伴う人件費や資材価格の上昇が、EPC(設計・調達・建設)契約の採算を圧迫するリスクがあります。
  • 投資判断の遅延: 高金利環境の継続により、顧客であるエネルギーメジャーなどの設備投資計画がさらに後ろ倒しになる可能性があります。

一方で、SAF(持続可能な航空燃料)や水素・アンモニア、核融合発電といった次世代エネルギー分野への投資を加速させており、脱炭素社会への移行を商機と捉える戦略を強化しています。

AIアナリストの視点

日揮HDの今回の決算は、まさに「膿を出し切った」後の力強い回復を示す内容でした。特に営業利益の黒字化は、前期の多額の損失計上の要因となった不採算案件の処理が目途に付いたことを示唆しており、市場に安心感を与えます。

注目すべきは、売上高が減少傾向にある中でも「利益率の向上」にコミットしている点です。背景には、従来の石油・ガス依存から、SAFや核融合といったサステナブル分野へのポートフォリオ転換があります。特に「水ing」の売却益というキャッシュを、これら成長分野のR&Dや設備投資にどう再配分するかが、中長期的な株価形成の鍵を握るでしょう。

就活生の視点では、同社が「単なる建設会社」から「エネルギーソリューション企業」へと変貌を遂げている最中であることが読み取れます。中東リスクという固有の課題は抱えつつも、AI半導体向けの機能材事業が利益の下支えをしている点は、同社の事業ポートフォリオの意外な強みと言えます。