業界ダイジェスト
株式会社フジクラ の会社詳細
株式会社フジクラ
フジクラ
2026年3月期 通期

フジクラ・2026年3月期、営業利益39%増の1,887億円——生成AI向け需要爆発、配当性向を40%へ引き上げ

増収増益
過去最高益
生成AI
データセンタ
光ファイバ
配当増額
株式分割
北米展開
構造改革
通期1年間の確定値(前年比)

売上高

1.2兆円

+20.7%

通期予想

1.2兆円

進捗率95%

営業利益

1,887億円

+39.2%

通期予想

2,110億円

進捗率89%

純利益

1,572億円

+72.5%

通期予想

1,560億円

進捗率101%

営業利益率

16.0%

電線大手のフジクラが14日に発表した2026年3月期の連結決算は、売上高・各利益ともに過去最高を更新する大幅な増収増益となりました。生成AIの急速な普及を背景に、北米を中心としたデータセンタ向けの光導波路製品や高密度光ケーブルの需要が「爆発的」とも言える伸びを見せ、収益を強力に牽引しました。同社は好調な業績とキャッシュフローを背景に、株主還元の方針を強化し、連結配当性向の目安を従来の30%から40%へ引き上げるとともに、1株を6株にする株式分割の実施を決定しました。

業績のポイント

2026年3月期の連結業績は、売上高が前年比 20.7%増1兆1,824億円、営業利益が同 39.2%増1,887億円 となりました。最終的な親会社株主に帰属する当期純利益は、前年から7割以上伸びて 1,572億円(前年比 +72.5%)に達しています。生成AIの進展に伴うデータセンタの世界的な増設ラッシュが追い風となり、同社が強みを持つ高密度光配線ソリューションが北米市場で圧倒的なシェアを維持したことが主因です。

収益性の向上も顕著で、売上高営業利益率は前期の 13.8% から 16.0% へと改善しました。銅価格の高騰というコスト増要因はあったものの、それ以上に高付加価値製品の比率が高まったことや、一過性のインフレ影響を適切に価格転嫁できたことが利益を押し上げました。まさに「AI特需」を確実に取り込んだ1年となりました。

業績推移(通期)

売上高営業利益

セグメント別動向

主力である情報通信事業部門が、全社の利益成長を牽引する「稼ぎ頭」としての存在感を強めています。同セグメントの売上高は 6,530億円(前年比 +44.7%)、営業利益は 1,527億円(同 +65.7%)と驚異的な成長を記録しました。特に、限られたスペースに大量の光ファイバを収容できる独自技術「SWR/WTC(Spider Web Ribbon)」が、ハイパースケールデータセンタ運営者のニーズに合致し、北米市場での需要を独占しました。

一方で、エレクトロニクス事業部門は苦戦を強いられました。売上高は 1,723億円(前年比 7.3%減)、営業利益は 77億円(同 66.5%減)と大幅な減益です。川下市場でのサプライチェーン混乱や競争激化に加え、生産拠点があるタイの通貨(バーツ)高によるコストアップが直撃しました。これを受け、同社は2026年度よりエレクトロニクスと自動車の両部門を統合し、経営資源の効率化を図る構造改革に着手します。

セグメント名売上高営業利益前年同期比(売上/利益)
情報通信6,530億円1,527億円+44.7% / +65.7%
エレクトロニクス1,723億円77億円△7.3% / △66.5%
自動車1,794億円68億円+1.3% / +17.0%
エネルギー1,570億円189億円+8.1% / +58.6%
不動産110億円50億円+1.9% / +2.1%
セグメント売上高構成比営業利益営業利益率
情報通信事業6,530億円55%1,527億円23.4%
エレクトロニクス事業1,723億円15%77億円4.5%
自動車事業1,794億円15%68億円3.8%
エネルギー事業1,570億円13%189億円12.0%

財務状況と資本政策

好業績を背景に財務体質は急速に改善しています。自己資本比率は前期末の 49.1% から 57.8% へと大幅に上昇しました。営業活動によるキャッシュフローは 1,329億円 の黒字を確保し、これを成長投資と株主還元にバランスよく配分する姿勢を鮮明にしています。総資産は流動資産の増加や有形固定資産への投資により、前期末から 1,391億円 増え、 9,695億円 となりました。

特筆すべきは、積極的な株主還元の拡充です。2026年3月期の年間配当は、従来予想から引き上げられ1株当たり 225円 となりました。さらに、投資家層の拡大を狙い、2026年4月1日付で「1対6」の株式分割を実施しました。分割後の2027年3月期の配当予想は 38円(分割前換算で 228円)としており、実質的な増配を継続する方針です。配当性向の目安を 40% に引き上げたことは、稼いだ利益をより手厚く株主に報いるという経営陣の強い意思表示と言えます。

通期見通しと成長戦略

2027年3月期の通期予想については、売上高 1兆2,430億円、営業利益 2,110億円 と、さらなる増収増益を見込んでいます。情報通信事業では、需要の急増に対応するため、日米で合計最大 3,000億円 規模の巨額投資を決定しました。これにより光ファイバケーブルの生産能力を現状の3倍に引き上げ、中長期的な成長基盤を固めます。

項目2026年3月期(実績)2027年3月期(予想)前期比(増減率)
売上高1兆1,824億円1兆2,430億円+5.1%
営業利益1,887億円2,110億円+11.8%
親会社純利益1,572億円1,560億円△0.7%

2027年3月期の純利益が微減予想となっているのは、光ケーブルの急激な増産に伴う原材料(水素等)の調達リスクや、中東情勢の緊迫化による物流停滞の可能性を保守的に見積もっているためです。しかし、データセンタ向けの強い需要という本業の追い風には揺るぎがなく、攻めの姿勢を崩さない計画です。

リスクと課題

同社は将来の成長に向けた複数のリスク要因を挙げています。第一に、原材料の供給安定性です。光ファイバ増産に不可欠な一部材料について、供給不足や価格上昇が懸念されています。第二に、地政学リスクです。ホルムズ海峡の封鎖などによる物流停滞が、グローバルなサプライチェーンに与える影響を注視しています。また、エレクトロニクス事業の再建も急務であり、新設される「電子・電装事業部門」において、自動車向け技術とのシナジーを早期に創出できるかが今後の焦点となります。

AIアナリストの視点

フジクラは現在、世界のAIインフラを支える「インフラ銘柄」として非常に強力なポジションにあります。特にデータセンタ内の配線を効率化する「SWR/WTC」という独自技術は、ハイパースケール業者にとって不可欠な存在となっており、これが同社の営業利益率を押し上げている最大の要因です。

注目すべきは、今回発表された配当性向40%への引き上げです。これまでは「稼げるようになったが、還元が保守的」というイメージがありましたが、この変更により、成長投資と株主還元のバランスを一段高いレベルで両立させるステージに入ったと評価できます。

懸念点としては、情報通信セグメントへの一本足打法的な依存が強まっている点です。苦戦するエレクトロニクス事業を自動車部門と統合することで、いかに収益の柱を多角化できるかが、次の2028年中期経営計画に向けた重要な試金石となるでしょう。