電通総研・2025年12月期通期、売上高10期連続の過去最高――DX需要捉え営業利益は8.8%増、30年ぶりの社名変更後も快走
売上高
1,649億円
+8.0%
通期予想
1,820億円
営業利益
229億円
+8.8%
通期予想
255億円
純利益
164億円
+8.3%
通期予想
180億円
営業利益率
13.9%
電通総研(旧・電通国際情報サービス)が発表した2025年12月期通期決算は、売上高が前期比8.0%増の1,648億円、営業利益が同8.8%増の228億円となり、売上高は10期連続、営業利益は8期連続で過去最高を更新しました。企業の旺盛なデジタル投資(DX)を背景に、コンサルティングからシステム構築までを一貫して手掛ける事業モデルが奏功しています。また、1株につき3株の株式分割と実質的な増配も発表し、株主還元姿勢を一段と強めています。
業績のポイント
2025年12月期の連結業績は、売上高が1,648億6,500万円(前年比+8.0%)、営業利益が228億8,800万円(同+8.8%)と、主要な全指標で過去最高を記録しました。当期純利益も163億6,500万円(同+8.3%)に到達し、8期連続の増益を達成しています。
好調の背景には、国内企業の構造的なDX需要の拡大があります。特に人事・会計といったバックオフィス業務の高度化や、金融機関のシステム刷新案件が業績を牽引しました。ソフトウェア製品の除却に伴う原価増や、人員増による人件費の増加(販売費及び一般管理費の増加)を、増収による利益の押し上げ効果が上回る形で増収増益のトレンドを維持しています。
| 項目 | 2024年12月期実績 | 2025年12月期実績 | 前年比 | 営業利益率 |
|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 1,526億円 | 1,648億円 | +8.0% | - |
| 営業利益 | 210億円 | 228億円 | +8.8% | 13.9% |
| 経常利益 | 210億円 | 236億円 | +12.0% | - |
| 当期純利益 | 151億円 | 163億円 | +8.3% | - |
業績推移(通期)
セグメント別動向
セグメント別では、ビジネスソリューションとコミュニケーションITの両部門が大幅な増益を達成し、全体の成長を支えました。一方で、製造ソリューションは投資コストが先行し、利益面で足踏みする形となりました。
ビジネスソリューションセグメントは、売上高が前年比18.6%増、営業利益が同31.5%増と際立った成長を見せました。商社向けに連結会計ソリューション「STRAVIS」の導入が進んだほか、電気・ガス、小売業向けに統合人事ソリューション「POSITIVE」の導入案件が拡大しました。収益性の高い自社製品の伸長により、セグメント利益率は25.0%と高水準を維持しています。
コミュニケーションITセグメントも、売上高が前年比19.1%増、営業利益が同38.9%増と躍進しました。官庁や自治体のデジタル改革支援が好調だったことに加え、前年度に連結子会社化したミツエーリンクスの業績が通期で寄与しました。電通グループ向けのマーケティング変革支援も堅調に推移しています。
製造ソリューションセグメントは、売上高が前年比0.8%増の610億円と微増に留まり、営業利益は同11.9%減の75億円と減益に転じました。輸送機器業界向けに製品開発支援システム(CAE/PLM)の販売は継続したものの、収益性の高いアドオン開発案件が減少したほか、将来の成長を見据えた人員増に伴う人件費の増加が利益を圧迫しました。
| セグメント | 売上高 (百万円) | 前年比 | 営業利益 (百万円) | 前年比 |
|---|---|---|---|---|
| 金融 | 34,832 | +2.3% | 4,459 | +2.6% |
| ビジネス | 28,013 | +18.6% | 6,994 | +31.5% |
| 製造 | 61,039 | +0.8% | 7,549 | △11.9% |
| コミュニIT | 40,980 | +19.1% | 3,886 | +38.9% |
| セグメント | 売上高 | 構成比 | 営業利益 | 営業利益率 |
|---|---|---|---|---|
| 金融ソリューション | 348億円 | 21% | 45億円 | 12.8% |
| ビジネスソリューション | 280億円 | 17% | 70億円 | 25.0% |
| 製造ソリューション | 610億円 | 37% | 75億円 | 12.4% |
| コミュニケーションIT | 410億円 | 25% | 39億円 | 9.5% |
財務状況と資本政策
総資産は前期末比で177億円増加し、1,650億円となりました。これは主に、受注拡大に伴う売上債権の増加や、将来のシステム開発を見据えた「預け金」の増加によるものです。自己資本比率は60.7%と、依然として高い財務健全性を維持しています。
株主還元については、2025年12月期の年間配当を従来の予想から増額し、前期比12円増の120円とすることを決定しました。また、2026年1月1日付で1株につき3株の株式分割を実施しました。投資単位当たりの金額を引き下げることで流動性を高め、投資家層の拡大を図る狙いがあります。
次期(2026年12月期)の配当予想は、分割後のベースで年間45円としています。これは分割前の基準に換算すると135円となり、実質的には15円の増配となる見込みです。同社は2027年12月期までに配当性向50%を目指す方針を掲げており、積極的な還元姿勢が鮮明になっています。
通期見通し
2026年12月期の通期見通しについて、同社は売上高1,820億円(前期比10.4%増)、営業利益255億円(同11.4%増)と、さらなる増収増益を予想しています。新中期経営計画「社会進化実装 2027」の2年目として、コンサルティング機能とテクノロジーの融合を加速させ、より大規模な変革案件の獲得を目指します。
| 項目 | 2025年12月期実績 | 2026年12月期予想 | 前期比 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 1,648億円 | 1,820億円 | +10.4% |
| 営業利益 | 228億円 | 25,500億円 | +11.4% |
| 当期純利益 | 163億円 | 18,000億円 | +10.0% |
注目のトピックとして、2026年1月1日付で子会社の電通総研セキュアソリューションと電通総研ITを合併し、「電通総研テクノロジー」を設立しました。グループ内の技術資源を集約し、システム構築からセキュリティ運用までを一元化することで、さらなる収益性の向上と受注能力の強化を図る戦略です。
リスクと課題
継続的な成長が見込まれる一方で、同社は以下のリスク要因を注視しています。
- IT人材の確保: 事業拡大に伴い、2027年までに就業人員を6,000名(現状比約1,000名増)まで増やす計画ですが、業界内での人材獲得競争は激化しており、人件費の上昇が利益を圧迫する可能性があります。
- 外部環境の不透明感: 地政学リスクや金融資本市場の変動による国内経済への影響を懸念材料として挙げています。
- 製造セグメントの立て直し: 製造業向けソリューションにおける高付加価値な独自アドオン製品の販売回復が、次期の利益率改善の鍵となります。
電通総研(旧ISID)の決算は、まさに「DXブームの勝ち組」を象徴する内容でした。特に10期連続の増収という記録は、電通グループという安定した顧客基盤を持ちながら、外販(グループ外顧客)でも「STRAVIS」や「POSITIVE」といった強力な自社IP(ソフトウェア)を確立している強みが出ています。
注目すべきは「シンクタンク×コンサルティング×IT」の三位一体戦略です。単なるシステムの受託開発(SI)に留まらず、上流の課題提言から関与することで、高い利益率(営業利益率13.9%)を維持しています。
懸念点を挙げるとすれば、利益成長率が売上成長率とほぼ並走(約8〜9%)しており、爆発的な利益率向上が見られなかった点です。これは成長のための人件費や教育投資、のれん償却費などが先行しているためですが、2026年に設立する「電通総研テクノロジー」による資源集約が、どの程度マージンの改善に寄与するかが今後の焦点となるでしょう。株主還元の大幅な強化は、プライム市場における投資家への強いアピールとなっており、市場からの期待値はさらに高まりそうです。
