業界ダイジェスト
カシオ計算機株式会社 の会社詳細
カシオ計算機株式会社
カシオ計算機
2026年3月期 通期

カシオ・2026年3月期、営業利益62%増の230億円——G-SHOCKの「2軸戦略」奏功、100億円の自社株買いも発表

増収増益
G-SHOCK
自社株買い
株主還元
中期経営計画
インド市場
EdTech
V字回復
通期1年間の確定値(前年比)

売上高

2,763億円

+5.5%

通期予想

2,950億円

進捗率94%

営業利益

231億円

+62.1%

通期予想

260億円

進捗率89%

純利益

182億円

+126.0%

通期予想

185億円

進捗率99%

営業利益率

8.4%

カシオ計算機が発表した2026年3月期通期の連結決算は、主力の時計事業が牽引し、営業利益が前年同期比 62.1%増23,071百万円 と大幅な増益を達成した。北米やインド、ASEAN市場で「G-SHOCK」などの高単価モデルと定番モデルを組み合わせた「2軸ブランド成長戦略」が実を結び、売上高も過去最高水準へ向けて着実に回復している。好調な業績を背景に、同社は上限 100億円 の自社株買いも公表し、積極的な株主還元姿勢を鮮明に打ち出した。

業績のポイント

2026年3月期の通期業績は、売上高が前年比 5.5%増276,267百万円 、営業利益は 62.1%増23,071百万円 となった。親会社株主に帰属する当期純利益は 126.0%増18,227百万円 に達し、前年の低迷からV字回復を遂げた形だ。利益率の向上も顕著で、売上高営業利益率は前期の 5.4% から 8.4% へと大きく改善している。

この大幅増益の背景には、不透明な世界情勢の中でも北米やアジア圏で時計の需要が底堅かったことがある。特に、時計事業の営業利益は 271億円 (前年比約34%増)と全社の利益を支える大黒柱となった。原材料費の高騰や物流コストの上昇といった外部要因に対し、高付加価値商品の展開と機動的な価格改定で対応したことが功を奏した格好だ。

項目前期実績 (2025/3)当期実績 (2026/3)前年比
売上高261,757百万円276,267百万円+5.5%
営業利益14,236百万円23,071百万円+62.1%
経常利益14,131百万円25,684百万円+81.8%
純利益8,064百万円18,227百万円+126.0%

業績推移(通期)

売上高営業利益

セグメント別動向

主力の時計事業は、売上高が 184,966百万円 、セグメント利益が 27,125百万円 と非常に好調であった。ブランド戦略として「G-SHOCK」の5000・5600シリーズといった角型定番モデルの再訴求と、2100シリーズなどの八角形フォルムの展開を組み合わせた「2軸戦略」がグローバルで浸透した。また、専用アプリ「CASIO WATCH」による顧客との接点強化も増収を後押しした。

教育・電子楽器を含むコンシューマ事業は、売上高 82,057百万円 、セグメント利益 3,415百万円 を記録した。EdTech(教育)分野では、新興国での需要獲得により関数電卓が堅調に推移し増収に寄与した。一方でサウンド(電子楽器)分野は、依然として厳しい市況が継続しており、構造改革による早期の黒字化が喫緊の課題となっている。

その他事業(成形部品・金型等)については、売上高 9,244百万円 に対し、 1,261百万円 のセグメント損失となった。非継続事業の影響もあり赤字となったが、経営資源を時計やEdTechといったコア事業へ集中させる方針を明確にしており、事業ポートフォリオの最適化を進めている。

セグメント売上高営業利益利益率
時計184,96627,12514.7%
コンシューマ82,0573,4154.2%
その他9,244△1,261-
セグメント売上高構成比営業利益営業利益率
時計1,850億円67%271億円14.7%
コンシューマ821億円30%34億円4.2%
その他92億円3%-1,261百万円

財務状況と資本政策

当期末の総資産は前期末比 198億円増3,514億円 となり、自己資本比率は 66.9% と高い水準を維持している。キャッシュ・フロー面では、営業活動によるキャッシュ・フローが 30,153百万円 の収入となり、前期(16,144百万円)から大幅に改善した。これにより、成長投資と株主還元の両立が可能な資金余力を確保している。

株主還元については、当期の年間配当を前期と同額の 45円 とした。さらに、重要な後発事象として 上限100億円(または600万株)の自己株式取得 を発表している。これは発行済株式総数に対する約1.37%の自己株式を消却したことに続く追加施策であり、資本効率の向上(ROE改善)と株主への利益還元を重視する経営姿勢を象徴している。

リスクと課題

今後の懸念材料として、会社側は以下のリスクを挙げている。

  • 外部環境の不安定化: 米国の関税政策の動向や中東地域における地政学的リスクの高まりが、物流やサプライチェーンに及ぼす影響を注視している。
  • コスト上昇圧力: 部材費や人件費の上昇が続いており、継続的な価格対応とコスト削減の両立が求められている。
  • 為替変動の影響: 次期の想定レートを 1USD=155円1EUR=180円 と設定しているが、想定を超えて円高が進行した場合、海外売上の邦貨換算額が目減りするリスクがある。
  • サウンド事業の再建: 楽器市場の回復が遅れる中、新しい演奏体験の提供を通じた需要創造と構造改革を早期に完遂できるかが焦点となる。

通期見通しと戦略トピック

2027年3月期の通期業績予想は、売上高 295,000百万円 (前期比6.8%増)、営業利益 26,000百万円 (同12.7%増)を見込む。同社は新たに「2027年3月期を初年度とする3ヵ年の中期経営計画」を策定し、インドやブラジルといった高成長エリアでのシェア拡大を最優先課題に掲げた。

新規事業としては、AIペット「Moflin(モフリン)」のグローバル展開を加速させるほか、メンタルウェルネス領域での独自ポジション確立を目指す。既存の時計・電卓という強固な収益基盤に加え、AIやデジタルサービスを組み合わせた新領域での成長が、次の3年間の鍵を握ることになる。

指標2026/3 実績2027/3 予想増減率
売上高276,267295,000+6.8%
営業利益23,07126,000+12.7%
純利益18,22718,500+1.5%
AIアナリストの視点

カシオの決算で最も注目すべきは、営業利益の劇的な回復力です。前期の営業利益率5.4%から8.4%へのジャンプアップは、単なる円安効果だけでなく、不採算事業の整理と「G-SHOCK」ブランドの再定義が機能し始めたことを示唆しています。

特に投資家視点では、100億円規模の自社株買い発表がサプライズとなりました。自己資本比率66%超という強固な財務基盤を「守り」ではなく、資本効率向上という「攻め」に転換し始めた点は高く評価されるでしょう。

就活生の視点では、同社が「精密機械メーカー」から「デジタル技術を融合させたライフスタイル・教育支援企業」へと脱皮しようとしている点に注目です。AIペット「Moflin」のような新規領域への投資や、インド・ブラジル等の新興国シフトは、今後のキャリア機会の広がりを予感させます。サウンド事業の立て直しという課題は残るものの、主力事業のキャッシュ創出能力は極めて高く、安定性と成長性のバランスが取れた決算と言えます。