カシオ計算機株式会社 の会社詳細
カシオ計算機株式会社
カシオ計算機
2026年3月期 第3四半期

カシオ計算機・2026年3月期Q3、営業利益61.7%増の181億円——時計事業の好調と年末商戦の成功で通期予想を上方修正

カシオ計算機
増収増益
G-SHOCK
上方修正
自社株買い
時計業界
年末商戦
構造改革
資本効率向上
2026年3月期
第3四半期累計期初から9ヶ月間の累計値(前年同期比)

売上高

2,080億円

+6.2%

通期予想

2,740億円

進捗率76%

営業利益

182億円

+61.7%

通期予想

220億円

進捗率83%

純利益

154億円

+261.6%

通期予想

170億円

進捗率91%

営業利益率

8.7%

カシオ計算機が29日に発表した2026年3月期第3四半期(4〜12月)連結決算は、売上高が 2,080億円(前年同期比 +6.2%)、営業利益が 181億円(同 +61.7%)と大幅な増益を達成しました。主力の時計事業において「G-SHOCK」の新製品や「CASIO WATCH」がグローバルで支持を集め、年末商戦を的確に捉えたことが業績を強力に牽引しました。好調な進捗を踏まえ、同社は通期の親会社株主に帰属する当期純利益予想を前期比 2.1倍 となる 170億円 へ上方修正し、同時に 上限50億円の自社株買い も発表しました。

業績のポイント

当第3四半期累計期間の業績は、売上・各段階利益ともに前年を大きく上回る着地となりました。売上高は 2,080億円(前年同期比 +6.2%)、営業利益は 181億円(同 +61.7%)、経常利益は 202億円(同 +80.7%)に達しています。特に親会社株主に帰属する四半期純利益は 154億円 と、前年同期の 42億円 から 約3.6倍 という驚異的な伸びを見せました。これに伴い、1株当たり四半期純利益(EPS)も 67.59円(前年同期は18.59円)へと急増しています。

利益率の大幅な改善は、高付加価値モデルの販売比率が高まったことや、為替の恩恵、さらに構造改革による費用抑制が奏功した結果です。米国を中心に個人消費が底堅く推移した一方、中国の内需回復の遅れといった懸念材料はあったものの、グローバルでのブランド戦略が功を奏しました。特に年末商戦における新製品の投入タイミングが最適化されたことが、増収増益の決定打となりました。

業績推移(通期)

売上高営業利益|当期累計通期予想残

セグメント別動向

主力の時計事業が収益の柱として圧倒的な存在感を示しました。時計事業の売上高は 1,389億円(前年同期比 +11.2%)、セグメント利益は 211億円(同 +32.1%)と極めて好調です。「G-SHOCK」では、視認性に優れたMIP液晶採用の『GMW-BZ5000』や、装着性を高めたミニマルデザインの『GST-B1000』などの新製品がヒットしました。また、若者の間で広がるレトロ・ヴィンテージトレンドを背景に「CASIO WATCH」が世界的に伸長し、利益率の向上に寄与しています。

教育・電子文具を含むコンシューマ事業は、売上高 620億円(前年同期比 +1.5%)、利益 27億円(同 +50.0%)となりました。EdTech分野では一部地域での関数電卓の値上げ前に駆け込み需要が発生し、増収を支えました。一方でサウンド分野については、楽器市場の市況の厳しさが継続しており、減収を余儀なくされています。その他事業については、システム事業の再編(HR事業の譲渡等)に伴う構成変化により、売上高 69億円、セグメント損失 11億円 となっています。

セグメント売上高営業利益前年比(利益)
時計1,389億円211億円+32.1%
コンシューマ620億円27億円+50.0%
その他69億円△11億円継続改善中
セグメント売上高構成比営業利益営業利益率
時計1,390億円67%211億円15.2%
コンシューマ621億円30%28億円4.4%
その他70億円3%-1,121百万円

通期見通しの上方修正

第3四半期までの好調な推移と足元の販売動向を反映し、カシオ計算機は2026年3月期の通期業績予想を上方修正しました。売上高は前回予想から変更ありませんが、営業利益を 220億円、純利益を 170億円(前回予想比 +20億円)へと引き上げました。背景には、時計事業の収益性が想定を上回って推移していることや、為替相場の安定、不採算事業の整理といった 経営基盤の強化 が挙げられます。

今回の修正では、為替レートを1米ドル= 145円、1ユーロ= 170円 と想定しています。期初からのブランド再構築やデジタルマーケティングの強化が実を結び、通期では親会社株主に帰属する当期純利益が前年比で 110.8%増 となる見通しです。中国経済の先行きや地政学リスクには引き続き注視が必要ですが、堅実な需要予測に基づいた強気の見通しを示しています。

項目前回予想今回修正前期実績
売上高2,740億円2,740億円2,617億円
営業利益200億円220億円142億円
純利益150億円170億円80億円

財務状況と資本政策

財務面では、総資産が前連結会計年度末比で 130億円 増の 3,446億円 となりました。有価証券の増加などが主な要因ですが、自己資本比率は 67.2% と高水準を維持しており、極めて健全な財務体質を保持しています。純資産も前年末比で 126億円 増加し、2,315億円 に達しています。

特筆すべきは、同社が決定した積極的な株主還元策です。キャピタルアロケーション方針に基づき、資本効率の向上を目指して 総額50億円(または380万株)を上限とする自己株式の取得 を実施することを発表しました。取得期間は2026年1月30日から3月24日までとし、取得した全株式を4月末に消却する予定です。これにより1株当たりの利益価値を高めるとともに、市場に対して ROE(自己資本利益率)改善 への強い意志を表明した形となります。

リスクと課題

同社が今後の懸念材料として挙げているのは、主に以下の外部要因です。

  • 中国市場の不透明感: 内需の回復鈍化が継続しており、高価格帯モデルへの影響がリスク要因となっています。
  • 為替相場の変動: ドルおよびユーロに対する円の動きは、海外売上比率の高い同社にとって利益の変動要因となります。
  • 原材料・物流費の動向: 世界的な物価上昇や地政学リスクに伴う物流コストの変動が、売上原価を圧迫する可能性があります。

これらのリスクに対し、同社は製品販売価格の適切な調整や、事業資産の効率的な運営、さらには不採算事業の構造改革を加速させることで、耐性のある組織構築を急いでいます。

AIアナリストの視点

今回の決算で最も注目すべきは、時計事業の「稼ぐ力」の完全復活です。一時期の勢い停滞から、レトロトレンドの波を掴んだ「CASIO WATCH」や、高機能な「G-SHOCK」新製品によって、ブランド価値を利益に転換するサイクルが再確立されています。

特に、純利益が前年同期比で3倍以上に膨らんだ点は、構造改革による「筋肉質な経営」への移行を裏付けています。純利益予想の大幅な上方修正に加え、50億円規模の自社株買いを即座に決定したスピード感は、投資家にとって非常にポジティブなメッセージです。

懸念される中国市場についても、他セグメントや他地域でのカバーが効いており、全社的なポートフォリオの安定感が増しています。今後は、サウンド事業の黒字化定着と、システム事業再編後の「その他」セグメントの底打ちが、さらなる株価評価の焦点になるでしょう。