アシックス・2026年12月期Q1、営業利益36.5%増の607億円——欧州・北米で高付加価値品が躍進、全セグメント増収増益
売上高
2,703億円
+29.7%
通期予想
9,500億円
営業利益
608億円
+36.5%
通期予想
1,710億円
純利益
466億円
+47.2%
通期予想
1,100億円
営業利益率
22.5%
アシックスが13日に発表した2026年12月期第1四半期(1〜3月)の連結決算は、売上高が前年同期比 29.7%増 の 2,702億円、営業利益が同 36.5%増 の 607億円 と大幅な増収増益を達成しました。欧州や北米を中心としたグローバル市場で、高付加価値なランニングシューズやライフスタイル路線の「スポーツスタイル」が力強く成長し、全カテゴリーで増収増益を記録しました。同社は「Year of ASIA」を掲げ、インドやインドネシアなど成長市場への投資も加速させています。
業績のポイント
当第1四半期の業績は、売上高・各段階利益ともに第1四半期として過去最高水準を更新しました。売上高は 2,702億円(前年同期比+29.7%)、営業利益は 607億円(同+36.5%) となり、営業利益率は前年同期から 1.1ポイント 改善して 22.5% に達しています。
この好業績を牽引したのは、グローバルでの「ブランド力の向上」と「高付加価値戦略」の浸透です。特にパフォーマンスランニングカテゴリーにおいて、2月に発売された「SUPERBLAST 3」や「NOVABLAST 5」といった機能性の高い高価格帯モデルが欧州や東南・南アジアで爆発的にヒットしました。また、円安による為替影響 も追い風となりましたが、為替影響を除いたベースでも売上高は 21.2%増、営業利益は 28.2%増 と、事業実態そのものが極めて堅調に推移しています。
| 指標 | 2025年12月期 Q1 | 2026年12月期 Q1 | 前年同期比 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 2,083億円 | 2,702億円 | +29.7% |
| 営業利益 | 445億円 | 607億円 | +36.5% |
| 経常利益 | 433億円 | 587億円 | +35.5% |
| 親会社株主に帰属する四半期純利益 | 316億円 | 465億円 | +47.2% |
業績推移(通期)
セグメント別動向
全てのカテゴリーにおいて増収増益を達成しており、ポートフォリオ全体がバランス良く成長しています。主力の「パフォーマンスランニング」は、売上高 1,167億円(同+19.1%)、カテゴリー利益 296億円(同+13.2%) となりました。高付加価値商品へのシフトが奏功し、収益性の高いビジネスモデルが確立されています。
特筆すべきは、若年層やファッション層に支持される「スポーツスタイル」の躍進です。売上高は 596億円(同+69.6%)、カテゴリー利益は 195億円(同+75.8%) と驚異的な伸びを見せました。欧州および北米での継続的な成長に加え、ブランド認知の拡大が直接的な購買に結びついています。また、インバウンド需要の恩恵を大きく受けた「オニツカタイガー」も、売上高 378億円(同+33.8%) と好調を維持しています。
地域別では、欧州地域が売上高 845億円(同+43.8%) と最大の成長寄与を見せました。日本国内もオニツカタイガーを中心としたインバウンド需要により、売上高 592億円(同+17.2%)、セグメント利益 145億円(同+35.8%) と大きく収益性を高めています。
| カテゴリー | 売上高 | 前年比 | カテゴリー利益 | 前年比 |
|---|---|---|---|---|
| パフォーマンスランニング | 1,167億円 | +19.1% | 296億円 | +13.2% |
| スポーツスタイル | 596億円 | +69.6% | 195億円 | +75.8% |
| オニツカタイガー | 378億円 | +33.8% | 149億円 | +45.3% |
| コアパフォーマンススポーツ | 305億円 | +19.8% | 74億円 | +23.2% |
| セグメント | 売上高 | 構成比 | 営業利益 | 営業利益率 |
|---|---|---|---|---|
| パフォーマンスランニング | 1,167億円 | 43% | 296億円 | 25.4% |
| スポーツスタイル | 596億円 | 22% | 196億円 | 32.9% |
| オニツカタイガー | 379億円 | 14% | 150億円 | 39.6% |
| コアパフォーマンススポーツ | 306億円 | 11% | 75億円 | 24.5% |
財務状況と資本政策
総資産は前期末比 536億円 増加の 6,401億円 となりました。主に売上拡大に伴う受取手形及び売掛金の増加(+463億円)が要因です。自己資本比率は 49.4% と、前期末の 46.3% から向上しており、財務基盤の健全性はさらに高まっています。
キャッシュフロー面では、営業活動によるキャッシュフローが 111億円の支出 となりましたが、これは売上債権の増加による一時的なものです。一方で、財務活動では短期借入金の純増により 218億円の収入 となっています。
株主還元については、2026年12月期の年間配当予想を 38.00円(前期実績28.00円)に据え置いています。当期純利益の大幅な伸びを背景に、安定的な増配 を通じて株主への利益還元を強化する方針です。
リスクと課題
好調な業績の一方で、同社はいくつかの外部リスクを注視しています。まず、中東情勢をはじめとする不安定な地政学リスクが、物流コストの上昇やサプライチェーンへの影響を及ぼす可能性を懸念しています。また、為替レートの急激な変動も、海外売上比率の高い同社にとって利益を左右する重要因子です。
競争環境においては、他メーカーとの付加価値競争が激化しており、継続的な研究開発投資が不可欠です。同社は兵庫県神戸市に「ASICS TECHNICAL LAB」を開設し、トップアスリート向けシューズの開発力を強化することで、技術的な優位性の維持を図る構えです。
通期見通し
2026年12月期の通期連結業績予想については、2026年2月に公表した数値を据え置いています。足元の業績は非常に順調ですが、世界情勢の先行き不透明感を考慮し、慎重な姿勢を崩していません。ただし、第1四半期時点での進捗は極めて良好であり、今後の推移次第では上方修正の期待もかかります。
| 項目 | 前回予想 | 当期実績(Q1) | 通期予想(変更なし) |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 9,500億円 | 2,702億円 | 9,500億円 |
| 営業利益 | 1,710億円 | 607億円 | 1,710億円 |
| 純利益 | 1,100億円 | 465億円 | 1,100億円 |
アシックスの決算は、まさに「ブランドの再定義」が成功していることを象徴しています。かつての競技用シューズ専業のイメージから、ファッション性の高い「スポーツスタイル」や高級ブランド化した「オニツカタイガー」が利益の柱に成長しており、収益構造が非常に強固になっています。
特筆すべきは、為替の追い風を除いても20%を超える高い成長を維持している点です。これは単なる円安メリットではなく、世界的なランニングブームと、同社の技術力に対する信頼が結びついた結果と言えます。
今後の焦点は、戦略的に投資を強めているインド・インドネシアといったアジア市場でのシェア拡大です。欧米で確立したプレミアムブランドの地位を、これらの成長市場でいかに再現できるかが、さらなる株価や企業価値向上の鍵となるでしょう。ガバナンス面でも、初の外国籍取締役の選任や有価証券報告書の早期提出など、グローバル基準を意識した経営姿勢が鮮明になっており、投資家からの評価を一段と高めそうです。
