アルバック・2026年6月期Q2、営業利益44.9%減の84億円——パワーデバイス投資の反動減響くも受注は17.8%増
売上高
1,239億円
-8.1%
通期予想
2,500億円
営業利益
85億円
-44.9%
通期予想
285億円
純利益
62億円
-40.5%
通期予想
200億円
営業利益率
6.8%
真空技術の総合メーカーであるアルバックが発表した2026年6月期第2四半期(中間期)連結決算は、売上高が前年同期比 8.1%減 の 1,238億9,300万円、営業利益が同 44.9%減 の 84億5,600万円 と大幅な減益となりました。日本および中国におけるパワーデバイス投資の反動減が主因ですが、一方で先端ロジックやAIサーバー向けなどの受注高は1,371億円(同17.8%増)と大きく伸びており、先行きの需要回復を示唆しています。同社は構造改革の一環として約170名の希望退職募集を決定し、収益性の再構築を急ぐ方針です。
業績のポイント
当第2四半期累計期間の業績は、売上・利益ともに前年を大きく下回る厳しい着地となりました。売上高は 1,238億9,300万円(前年同期比 8.1%減)、営業利益は 84億5,600万円(同 44.9%減)に沈んでいます。これは前年度まで極めて旺盛だった電気自動車(EV)向けのパワーデバイス投資が一服し、その反動減が装置販売を直撃したためです。
一方で、将来の業績の先行指標となる受注高は 1,371億500万円(前年同期比 17.8%増)と二桁増を記録しました。生成AIの普及に伴う先端ロジックや次世代メモリへの投資、さらにはIT製品向け有機ELパネルの大型化投資が活発化していることが背景にあります。足元の利益は減少したものの、受注残高の積み上がりにより、通期では増益を確保するシナリオを維持しています。
| 項目 | 2025年6月期 中間 | 2026年6月期 中間 | 前年同期比 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 1,348億円 | 1,238億円 | △8.1% |
| 営業利益 | 153億円 | 84億円 | △44.9% |
| 経常利益 | 160億円 | 91億円 | △43.0% |
| 中間純利益 | 104億円 | 62億円 | △40.5% |
業績推移(通期)
セグメント別動向
主力となる真空機器事業は、売上高 958億7,000万円(前年同期比 12.2%減)、営業利益 68億3,300万円(同 49.0%減)と苦戦しました。半導体分野では先端パッケージング向けなどが好調だったものの、日本・中国でのパワーデバイス投資の落ち込みを補いきれませんでした。一方で、AIサーバー冷却システム用のリークテスト装置など、新しい成長領域での受注は堅調に推移しています。
真空応用事業は、売上高 280億2,300万円(前年同期比 9.2%増)と増収を確保しました。ディスプレイや半導体電子関連の工場稼働率が高水準で維持されたことにより、消耗品となる材料の販売が伸びたことが寄与しています。ただし、製品ミックスの変化などにより営業利益は 15億5,000万円(同 17.4%減)と減益を余儀なくされました。
| セグメント名 | 売上高 | 前年同期比 | 営業利益 | 前年同期比 |
|---|---|---|---|---|
| 真空機器事業 | 958億円 | △12.2% | 68億円 | △49.0% |
| 真空応用事業 | 280億円 | +9.2% | 15億円 | △17.4% |
| セグメント | 売上高 | 構成比 | 営業利益 | 営業利益率 |
|---|---|---|---|---|
| 真空機器事業 | 959億円 | 77% | 68億円 | 7.1% |
| 真空応用事業 | 280億円 | 23% | 16億円 | 5.5% |
財務状況と資本政策
総資産は前期末比で 75億6,200万円 増加し、 3,826億2,400万円 となりました。受注の増加に伴い仕掛品などの棚卸資産が積み上がったことが主な要因です。負債面では長期借入金の返済が進んだ一方、仕入債務が増加しています。自己資本比率は59.0%と、前期末(59.6%)からほぼ横ばいの高い水準を維持しており、財務の健全性に揺らぎはありません。
配当については、期末に 164円 を予定しており、年間配当は前期と同額を維持する方針です。利益が一時的に落ち込む中でも、安定した還元を継続する姿勢を示しています。なお、2026年2月より自己株式の取得(48万7,000円相当)を実施しており、資本効率の向上にも取り組んでいます。
戦略トピック:希望退職募集とサイバー攻撃
決算発表と同時に、同社は約170名の希望退職者の募集を発表しました。これは中長期経営計画「バリューアッププラン」に基づき、東北・九州の工場を含む人員体制を見直すことで、半導体電子中心の事業ポートフォリオへ転換を加速させる狙いがあります。退職日は2026年6月末を予定しており、構造改革に伴う特別退職金などのコストは今後精査される見込みです。
また、リスク要因として韓国子会社におけるランサムウェア被害を公表しました。2026年1月にサーバー内のファイルが暗号化される被害が判明し、現在外部専門家とともに復旧と影響調査を進めています。現時点で通期業績予想への変更はありませんが、調査結果次第では今後の焦点となる可能性があります。
通期見通し
2026年6月期の通期連結業績予想については、前回公表(2025年8月13日)の数値を据え置いています。中間期時点では減益となっているものの、豊富な受注残高を背景に、下期からの巻き返しを図る計画です。通期の純利益は前期比 19.9%増 の 200億円 を見込んでおり、構造改革による収益力強化が鍵となります。
| 項目 | 前回予想 | 今回予想 | 前期実績(参考) |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 2,500億円 | 2,500億円 | 2,513億円 |
| 営業利益 | 285億円 | 285億円 | 265億円 |
| 純利益 | 200億円 | 200億円 | 166億円 |
今回の決算は、パワーデバイス投資の急ブレーキが数字に如実に表れた形となりましたが、投資家が注目すべきは売上よりも「受注高」の推移です。前年同期比で約18%増という数字は、生成AIやITデバイスの高度化といった潮流を確実に捉えていることを示唆しています。
特に興味深いのは、決算と同時に発表された「希望退職の募集」です。業績が悪化してから慌てて行う削減ではなく、中長期計画に基づいた「事業ポートフォリオの転換」を目的としている点に、経営陣の不退転の決意が感じられます。
懸念点は韓国子会社でのサイバー攻撃被害の規模です。技術流出のリスクや復旧コスト、さらには顧客への納期への影響がないか、次四半期以降の進捗を注視する必要があります。構造改革と受注消化が計画通り進めば、来期以降の収益性は一段と高まるポテンシャルを秘めています。
