豊田通商株式会社 の会社詳細
豊田通商株式会社
豊田通商
2026年3月期 第3四半期

豊田通商・2026年3月期Q3、収益9.6%増の8.3兆円――アフリカ事業が2割増益で牽引、増配と自社株買い拡大を継続

豊田通商
増収増益
アフリカ事業
自動車販売
増配
自己株買い
TOB
再生可能エネルギー
進捗率好調
第3四半期累計期初から9ヶ月間の累計値(前年同期比)

売上高

8.4兆円

+9.6%

営業利益

4,032億円

+8.6%

純利益

2,870億円

+3.3%

通期予想

3,600億円

進捗率80%

営業利益率

4.8%

豊田通商が3日発表した2026年3月期第3四半期決算は、収益が前年同期比 9.6%増8兆3,816億円 、親会社の所有者に帰属する四半期利益が同 3.3%増2,869億円 となった。主力の自動車販売が豪亜やアフリカ地域で堅調に推移し、増収増益を確保した。同社は株主還元の強化として 年間配当を前期比11円増の116円 とする方針を維持したほか、自己株式の公開買付け価格の引き上げも発表し、資本効率の向上を鮮明にしている。

業績のポイント

2026年3月期第3四半期の累計業績は、世界的な自動車需要の回復と、同社が強みを持つ特定市場でのシェア拡大が奏功し、増収増益の着地となった。収益は前年同期を約 7,339億円 上回る 8兆3,816億円(+9.6%) を記録。営業活動に係る利益も 4,032億円(+8.6%) と伸長した。背景には、海外での新車販売台数の増加に加え、自動車生産関連の物流や部品供給の取り扱いが拡大したことがある。

利益面では、販売費及び一般管理費が増加したものの、収益拡大に伴う売上総利益の増加がこれを補った。特に アフリカ市場での圧倒的な事業基盤 が収益の柱として機能しており、西アフリカを中心とした自動車販売が過去最高水準の利益を押し上げている。一方で、原材料価格の下落や資源市況の変動が一部セグメントで下押し要因となったが、多角化した事業ポートフォリオがグループ全体の成長を下支えする形となった。

業績推移(通期)

売上高営業利益|当期累計

セグメント別動向

全8セグメントのうち、アフリカやモビリティ、サプライチェーンなど自動車関連の5セグメントが増益を達成した。特に「アフリカ」セグメントは利益 707億円(前年比+19.8%) と目覚ましい成長を見せ、西アフリカ地域での新車販売が極めて好調に推移した。また「モビリティ」セグメントも、豪亜地域での販売台数増加により利益 516億円(+14.7%) と大きく伸ばしている。

反面、市況の影響を強く受けたのが「メタル+(Plus)」と「サーキュラーエコノミー」だ。メタル部門は北米での自動車向け需要は堅調だったものの、鋼材価格の下落が響き利益 325億円(△6.8%) となった。サーキュラーエコノミー部門も資源価格の変動や一過性要因により利益 309億円(△16.4%) と苦戦。欧州での発電量減少により「グリーンインフラ」も利益 229億円(△12.2%) と前年を下回った。

セグメント収益(億円)セグメント利益(億円)前年比(利益)
メタル+13,581325△6.8%
サーキュラー15,963309△16.4%
サプライチェーン9,797399+13.3%
モビリティ8,631516+14.7%
グリーンインフラ6,524229△12.2%
デジタル11,440228+10.8%
ライフスタイル4,271132+18.8%
アフリカ14,156707+19.8%
セグメント売上高構成比営業利益営業利益率
メタル+(Plus)1.4兆円16%326億円2.4%
アフリカ1.4兆円17%708億円5.0%
モビリティ8,632億円10%517億円6.0%

財務状況と資本政策

財務基盤は、事業拡大に伴う資産積み増しにより総資産が前期末比で 1兆473億円 増え、 8兆1,047億円 となった。棚卸資産の増加( +2,874億円 )や円安に伴う在外営業活動体の換算差額( +1,174億円 )が主な増加要因。親会社所有者帰属持分比率は 37.2% と、前期末と同水準を維持しつつ、 資本の厚みを増している 状況だ。

資本政策においては、積極的な株主還元が際立っている。2026年3月期の年間配当は前期から11円増額の 116円 (中間58円、期末58円予想)を予定。また、2025年6月に発表していた 自己株式の公開買付け(TOB) について、買付価格の上限を当初の3,054円から 5,862円 へと大幅に引き上げた。これは資産効率の向上と、政策保有株(豊田自動織機株など)の売却に伴う特別利益の計上を見越した経営判断であり、投資家からはROE向上への強い意志として評価されている。

通期見通し

2026年3月期の通期業績予想については、2025年10月公表の数値を据え置いた。最終利益は前期比 0.7%減3,600億円 を見込む。第3四半期までの進捗率は 79.7% と順調に推移しており、アフリカなどの好調セグメントが市況悪化セグメントをカバーする構造が続けば、予想達成の蓋然性は高い。

項目前回予想今回予想前期実績進捗率
親会社株主利益3,600億円3,600億円3,626億円79.7%
1株当たり利益341.00円341.00円343.37円-

リスクと課題

好調な決算の一方で、今後の不透明要因として世界的な関税措置への懸念を挙げている。特に米国の対外政策の変化は、主力である北米の自動車サプライチェーンに直接的な影響を及ぼすリスクがある。また、中国の不動産不況長期化に伴う景気停滞や、中東・ウクライナなどの地政学リスクによる原油・資源価格の激しい変動は、サーキュラーエコノミーやメタル部門の収益を左右する課題となっている。

また、自動運転トラックの社会実装や再生可能エネルギー事業など、 次世代の成長投資 も加速させているが、これらのR&D費や設備投資が短期的に利益を圧迫する可能性もある。人手不足による物流コストの上昇も継続しており、業務の効率化とデジタル変革(DX)を通じた収益構造の強靭化が急務となっている。

AIアナリストの視点

豊田通商の今回の決算で特筆すべきは、総合商社の中でも「自動車」と「アフリカ」という独自ドメインにおける強さが際立っている点です。

他商社が資源価格の下落で苦戦する場面でも、西アフリカの新車販売という実需に基づいたビジネスが2割近い増益を叩き出しており、構造的な強みを感じさせます。また、自己株式の買付価格を倍近い水準へ上方修正したことは、市場価格との乖離を埋めるだけでなく、同社が「資本コストを意識した経営」を強力に進めている証左と言えます。

注目すべきは、保有する豊田自動織機株の売却に関連する特別利益(約2,511億円見込み)の扱いです。これが最終利益にどう反映され、さらなる還元や新規事業への投資にどう繋がるかが、今後の株価形成の鍵となるでしょう。