東宝株式会社 の会社詳細
東宝株式会社
東宝
2026年2月期 通期

東宝・2026年2月期通期、純利益19%増の517億円——「鬼滅の刃」「国宝」がメガヒット、IPアニメ事業を強化

増収増益
鬼滅の刃
メガヒット
IPビジネス
アニメ事業
株式分割
増配
エンタメ業界
中期経営計画
通期1年間の確定値(前年比)

売上高

3,607億円

+15.2%

通期予想

3,450億円

進捗率105%

営業利益

679億円

+5.0%

通期予想

620億円

進捗率109%

純利益

518億円

+19.4%

通期予想

410億円

進捗率126%

営業利益率

18.8%

東宝が4月14日に発表した2026年2月期の連結決算は、売上高にあたる営業収入が前年同期比 15.2%増3,606億円 、純利益が 19.4%増517億円 と大幅な増収増益となった。劇場版「鬼滅の刃」や22年ぶりの実写記録更新となった「国宝」などのメガヒットが相次ぎ、映画事業が業績を強力に牽引した。同社は 「中期経営計画 2028」 の達成に向け、戦略領域として新たに「IP・アニメ事業」を独立セグメント化し、収益基盤の多様化を加速させている。

トーク

東宝 2026年2月期 通期決算

さくら × けんじ の対話形式解説

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業績のポイント

2026年2月期の連結業績は、映画の配給・興行の両面で歴史的なヒット作に恵まれ、過去最高水準の収益を達成した。営業収入は 3,606億6,300万円 (前年比 +15.2% )、営業利益は 678億8,900万円 (前年比 +5.0% )となった。特に「劇場版『鬼滅の刃』無限城編」や、興行収入200億円を突破した実写映画「国宝」の貢献が大きく、映画館入場者数は前年比 27.6%増4,900万人 に達した。

利益面では、映画製作・配給の好調に加え、新設されたIP・アニメ事業における国内外の配信収益やキャラクターグッズ販売が大きく寄与した。一方で、連結子会社での独占禁止法関連損失を特別損失に計上したものの、本業の好調がこれを十分に補った。経常利益は 701億4,000万円 (前年比 +8.8% )となり、本業の稼ぐ力を示す営業利益率も 18.8% と高い水準を維持している。

項目2025年2月期2026年2月期前年比
営業収入3,131億円3,606億円+15.2%
営業利益646億円678億円+5.0%
経常利益644億円701億円+8.8%
純利益433億円517億円+19.4%

業績推移(通期)

売上高営業利益

セグメント別動向

当連結会計年度より、成長戦略を明確化するため、従来の映画事業からアニメ関連ビジネスを切り出し、「IP・アニメ事業」 を新設した。全セグメントにおいて事業環境の変化に応じた戦略的な再編が進んでいる。

映画事業は、営業収入 1,826億円 (前年比 +30.6% )、営業利益 373億円 (同 +30.3% )と爆発的な伸びを見せた。自社配給の「劇場版『鬼滅の刃』」や「名探偵コナン」などのアニメ作品に加え、実写作品「国宝」が社会現象化する大ヒットとなった。TOHOシネマズによる興行事業も、これら話題作の動員に加え、飲食売店の営業施策が奏功し大幅な増益を達成した。

新設されたIP・アニメ事業は、営業収入 752億円 、営業利益 172億円 となった。「僕のヒーローアカデミア」「呪術廻戦」「葬送のフリーレン」といった強力なIPの国内外配信、および「ゴジラ」等の商品化権収入が堅調に推移した。商品販売では「ゴジラ カードゲーム」などの新商品投入や、海外展開を統括するTOHO Globalを通じた積極的な施策が進んでいる。

演劇事業は、旗艦劇場である帝国劇場が2025年2月末より休館となった影響を受け、営業収入は 223億円 (前年比 2.5%減 )、営業利益は 34億円 (同 16.1%減 )となった。一方、外部劇場での「レ・ミゼラブル」上演や、「舞台『千と千尋の神隠し』」の海外公演など、公演機会の確保とIPの多角活用に注力した。不動産事業は、空室率 0.4% と極めて低い水準を維持し、営業利益 190億円 (前年比 13.1%増 )と安定的な収益源として機能している。

セグメント営業収入前年比営業利益前年比
映画事業1,826億円+30.6%373億円+30.3%
IP・アニメ事業752億円+8.5%172億円△22.2%
演劇事業223億円△2.5%34億円△16.1%
不動産事業791億円△0.6%190億円+13.1%
セグメント売上高構成比営業利益営業利益率
映画事業1,826億円51%373億円20.4%
IP・アニメ事業753億円21%173億円23.0%
演劇事業223億円6%35億円15.5%
不動産事業792億円22%190億円24.0%

財務状況と資本政策

総資産は前期末比 498億円 増の 7,029億円 となった。有価証券の増加や、業績好調に伴う現金預金の積み増しが主な要因である。自己資本比率は 73.3% と極めて強固な財務体質を維持しており、成長投資への余力を十分に確保している。

株主還元については、2026年2月期の年間配当を前期から25円増額し、1株当たり 110円 (配当性向 35.9% )とした。また、2026年3月1日付で1株につき5株の 株式分割 を実施した。投資単位当たりの金額を引き下げることで、流動性の向上と個人投資家層の拡大を図る経営判断を下している。自社株買いについても約 149億円 を実施しており、資本効率の向上と機動的な資本政策を継続している。

通期見通し

2027年2月期の通期予想は、歴史的なヒットが相次いだ前期の反動や、物価上昇によるコスト増を見込み、慎重な計画となっている。営業収入は 3,450億円 (前期比 4.3%減 )、営業利益は 620億円 (同 8.7%減 )を見込む。ただし、2026年3月に開始する新サービス「TOHO-ONE」による顧客データ基盤の整備や、設備投資への 298億円 投入など、将来の成長に向けた布石を打つ方針だ。

項目2026年2月期実績2027年2月期予想増減率
営業収入3,606億円3,450億円△4.3%
営業利益678億円620億円△8.7%
純利益517億円410億円△20.8%
配当金110.0円22.0円(分割考慮)

リスクと課題

同社が直面している主なリスクと課題は以下の通り。

  • ヒット依存度: 特定のメガヒット作品への業績依存度が高く、作品供給のサイクルによって収益が変動しやすい。
  • 外部環境の不透明感: 慢性的な建設技能者不足や、労務費・資機材価格の上昇が不動産事業や舞台製作のコストを押し上げる要因となっている。
  • 帝国劇場の休館影響: 2025年2月からの休館に伴い、演劇事業の収益機会が一時的に制約される。
  • グローバル競争: アニメ市場の拡大に伴い、配信プラットフォームや海外スタジオとの競争が激化しており、IP創出力の維持が不可欠となっている。
AIアナリストの視点

今回の決算で最も注目すべきは、東宝が「映画配給・興行の会社」から「IP(知的財産)を軸としたグローバル・エンタメ企業」へと構造変革を加速させている点です。

  • IP・アニメ事業の独立: 従来「映画」の一部だったアニメを切り出したことは、配信やグッズ販売など、映画館の枠を超えた収益化を最優先する姿勢の表れです。これはディズニーやソニーGが歩んだ道であり、市場からも高い評価を得るでしょう。
  • 資本政策の積極化: 1:5という大胆な株式分割や増配は、好調な業績を背景に株主との対話を重視する姿勢を示しています。自己資本比率70%超という健全すぎる財務を、どう成長投資へ回していくかが今後の焦点です。
  • 実写映画の復活: アニメに依存しがちだった近年の邦画界において、「国宝」が興収200億円を突破したことは、同社の製作・配給能力の高さと市場の厚みを再確認させる結果となりました。

次期予想が減益となっているのは、あくまでの前期が「できすぎ」だったことへの反動と、新サービス「TOHO-ONE」への投資を見込んだ保守的な数字と見てよいでしょう。