株式会社資生堂 の会社詳細
株式会社資生堂
資生堂
2025年12月期 通期

資生堂・2025年12月期通期、最終赤字406億円に拡大——米州事業で468億円の減損計上も、次期は20円増配の強気予想

赤字転落
減損損失
大幅増配
構造改革
日本事業好調
中国市場
インバウンド消費
化粧品業界
V字回復
通期1年間の確定値(前年比)

売上高

9,700億円

-2.1%

通期予想

9,900億円

進捗率98%

営業利益

-28,788百万円

通期予想

690億円

進捗率-42%

純利益

-40,680百万円

通期予想

420億円

進捗率-97%

営業利益率

-3.0%

資生堂が10日に発表した2025年12月期連結決算(IFRS)は、売上高が 9,699億9,200万円(前期比 2.1%減)となり、親会社の所有者に帰属する当期損益は 406億8,000万円の赤字(前期は108億1,300万円の赤字)へと悪化した。米州事業におけるブランドの苦戦を受け、約468億円ののれん減損損失を計上したことが重荷となった。一方で、日本事業の収益性改善により本業の稼ぎを示すコア営業利益は 445億2,000万円(同 22.4%増)と伸長。2026年12月期は構造改革の完遂を見込み、年間配当を前期比20円増の 60円 へと大幅に引き上げる方針だ。

資生堂・2025年12月期通期、最終赤字406億円に拡大——米州事業で468億円の減損計上も、次期は20円増配の強気予想

業績のポイント

2025年12月期の連結業績は、売上高が 9,699億9,200万円(前年比 2.1%減)、本業の収益力を示すコア営業利益が 445億2,000万円(同 22.4%増)となった一方で、最終損益は 406億8,000万円の赤字を計上した。大幅な最終赤字の主因は、米州事業における「Drunk Elephant(ドランク エレファント)」の不振に伴い、将来の収益見通しを引き下げたことで 468億円ののれん減損損失 を特別に計上したためだ。これに加え、日本国内での早期退職支援プラン等の構造改革費用も利益を押し下げた。

一方で、実質的な稼ぐ力は着実に回復している。国内では高価格帯ブランド「SHISEIDO」や「エリクシール」の新商品が寄与し、さらに構造改革による固定費削減が奏功して 日本事業のコア営業利益は前年比5割増 となった。中国・トラベルリテール市場も上期は消費停滞の影響を強く受けたものの、下期にかけてはEコマースイベントの盛り上がりにより回復の兆しを見せている。会社側は、2025年までに「痛み」を伴う構造改革に目処をつけたとして、次期以降のV字回復に向けた地盤固めが完了したとの認識を示している。

業績推移(通期)

売上高営業利益

セグメント別動向

セグメント別の状況を見ると、稼ぎ頭である日本事業が利益成長を牽引した一方で、米州事業が最大の懸念材料となった。各セグメントの概況は以下の通りである。

日本事業は売上高 2,953億円(前年比 0.4%増)、コア営業利益 390億円(同 50.6%増)と大幅な増益を達成した。訪日外国人によるインバウンド消費が過去最高水準で推移したことに加え、最新技術を搭載したスキンケア商品の投入がブランド力を底上げした。利益面では、マーケティングの効率化と 固定費の徹底した削減 が利益率を押し上げ、コア営業利益率は前年の8.8%から 13.1% へと飛躍的に向上した。

中国・トラベルリテール事業は売上高 3,422億円(同 4.3%減)、コア営業利益 645億円(同 10.4%減)となった。中国国内の景況感悪化により、海南島など免税市場での購買意欲が低下したことが響いた。しかし、11月の大型セール「ダブルイレブン」では注力ブランドが健闘し、下期は実質的なプラス成長を確保している。

米州事業は売上高 1,066億円(同 10.1%減)、コア営業利益は 116億円の赤字 となった。主力ブランドの不振に加え、原価率の悪化が利益を圧迫した。今回の巨額減損計上により、財務上の負の遺産を整理した形となる。

セグメント売上高 (百万円)前年比コア営業利益 (百万円)前年比
日本295,343+0.4%38,972+50.6%
中国・TR342,244△4.3%64,525△10.4%
アジア73,290+2.3%5,079+3.6%
米州106,584△10.1%△11,566
欧州141,129+6.4%3,949+48.5%
セグメント売上高構成比営業利益営業利益率
日本事業2,953億円30%390億円13.1%
中国・トラベルリテール事業3,422億円35%645億円18.7%
アジアパシフィック事業733億円8%51億円6.8%
米州事業1,066億円11%-11,566百万円-10.4%
欧州事業1,411億円15%39億円2.7%

財務状況と資本政策

2025年12月期末の総資産は、のれんの減損計上や棚卸資産の圧縮により、前期末から646億円減少して 1兆2,672億5,600万円 となった。自己資本比率は 47.4% と、前年末並みの水準を維持しており、財務の健全性は保たれている。キャッシュフロー面では、営業活動によるキャッシュフローが 1,098億9,000万円(前期比 614億円増)と大幅に改善した。これは利益の改善に加え、棚卸資産の効率的な管理が進んだ結果である。

特筆すべきは強気な還元方針だ。2025年12月期の年間配当は、利益水準にかかわらず前期と同額の 40円 を維持する。さらに、2026年12月期には構造改革によるキャッシュ創出力の向上を背景に、年間60円(前期比20円増配) とする予想を公表した。これは株主所有者持分配当率(DOE)3.9% を見込む水準であり、業績回復への強い自信と株主重視の姿勢を鮮明にしている。

通期見通し

2026年12月期の業績予想は、構造改革の成果がフルに寄与し、黒字転換と大幅な増益 を見込んでいる。売上高は 9,900億円(前期比 2.1%増)、コア営業利益は 690億円(同 55.0%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は 420億円(前期は赤字)を計画している。米州事業におけるブランドの立て直しと、日本事業における「高収益構造の確立」が達成されるかが最大の焦点となる。

項目2024年12月期(実績)2025年12月期(実績)2026年12月期(予想)
売上高9,906億円9,700億円9,900億円
コア営業利益364億円445億円690億円
親会社帰属純利益△108億円△407億円420億円

リスクと課題

同社が直面する主なリスクとして、以下の点が挙げられる。

  • 中国市場の不透明感: 景気低迷に伴う消費行動の変化や、現地ブランドとの競争激化が継続するリスクがある。
  • 米州事業の早期再生: 減損処理を行った後の「Drunk Elephant」等の主力ブランドを、計画通りに成長軌道へ戻せるかが課題。
  • 地政学リスクと為替変動: 原材料価格の高騰や、日中関係を含む国際情勢の変化がサプライチェーンや需要に与える影響。
  • 構造改革の完遂: 2026年に向けたコスト削減策が、ブランド投資の抑制につながり、中長期的な成長力を削ぐ懸念。
AIアナリストの視点

資生堂の今回の決算は、表面上の「400億円超の赤字」という数字以上に、経営陣の「負の遺産の一掃」と「次期への自信」が読み取れる内容でした。特に米州事業の減損は痛みを伴いますが、不振ブランドの価値を一度リセットしたことで、2026年期からの利益の出方をクリアにする狙いがあるでしょう。

注目すべきは2026年期の年間配当60円という予想です。この赤字決算のタイミングで大幅増配を発表するのは、構造改革によって損益分岐点が下がり、キャッシュを安定して稼げる体質に変わったという市場へのメッセージと解釈できます。

就職活動中の学生や投資家にとっては、同社が「日本での稼ぎ方を確立し、海外での負債を整理した段階」にあると見ることができます。今後は、中国・米国という二大市場で、日本同様の「高収益モデル」を再構築できるかどうかが、真の復活を左右するポイントになるでしょう。