パソナグループ・2026年5月期Q3、売上高2,294億円で微増——万博関連収益で経常損失は大幅縮小、BPO大型案件終了を他部門でカバー
売上高
2,295億円
+0.2%
通期予想
3,100億円
営業利益
-1,329百万円
通期予想
5億円
純利益
-1,893百万円
通期予想
-1,800百万円
営業利益率
-0.6%
株式会社パソナグループが14日に発表した2026年5月期第3四半期(2025年6月〜2026年2月)の連結決算は、売上高が前年同期比 0.2%増 の 2,294億7,000万円 となった。BPO(業務受託)事業における過去の大型受託案件がピークアウトした影響で同部門は減収となったが、人材派遣や地方創生、ライフソリューション部門が伸び、全体の売上高をわずかに押し上げた。利益面ではITインフラ費用や人件費の増加が重荷となり 13億2,900万円の営業損失 を計上したが、大阪・関西万博関連の協賛金・物販収入が営業外収益に寄与し、経常損失は前年同期の8億4,200万円から2億8,600万円へと大幅に改善している。
パソナグループ 2026年5月期 第3四半期決算
さくら × けんじ の対話形式解説
業績のポイント
当第3四半期の連結業績は、売上高が 2,294億7,000万円 (前年同期比 +0.2% )、営業損失が 13億2,900万円 (前年同期は12億8,000万円の損失)となった。売上高はBPO事業の反落を他の成長分野で補い、微増を確保した。売上総利益は 515億1,800万円 (同 +3.7% )と改善したものの、退職給付費用の増加やITインフラの利用料金改定に伴う販管費の膨張が利益を圧迫し、営業赤字が継続する形となった。
特筆すべきは営業外収益の動向だ。大阪・関西万博へのパビリオン出展に伴う協賛金収入や物販収入が寄与し、営業外収益合計は 19億4,300万円 (前年同期は7億9,400万円)に倍増した。これにより経常損失は 2億8,600万円 となり、前年同期から 5億5,500万円 の赤字幅縮小を達成している。一方で、万博出展に関連する費用を特別損失に計上したことから、親会社株主に帰属する四半期純損失は 18億9,300万円 となったが、こちらも前年同期(61億6,300万円の損失)からは大幅に改善した。
| 項目 | 2025年5月期 Q3 | 2026年5月期 Q3 | 前年同期比 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 2,289億円 | 2,294億円 | +0.2% |
| 営業利益 | △12.8億円 | △13.2億円 | — |
| 経常利益 | △8.4億円 | △2.8億円 | — |
| 四半期純利益 | △61.6億円 | △18.9億円 | — |
業績推移(通期)
セグメント別動向
主力であるHRソリューションセグメントは、売上高 2,112億7,000万円 (前年同期比 0.7%減 )、営業利益 103億1,000万円 (同 5.0%減 )となった。BPOサービスでは大型受託案件の終了による減収影響が続いている。しかし、戦略的に進めている高付加価値な専門分野へのシフトが奏功し、売上総利益率は 22.2% (同 +0.9pt )へと改善した。エキスパートソリューション(人材派遣)は、派遣料金の改定や新規登録者の増加により売上高 1,016億6,400万円 (同 +1.3% )と堅調に推移した。
地方創生・観光ソリューションセグメントは、売上高 59億6,400万円 (前年同期比 20.4%増 )と高い成長を見せた。兵庫県淡路島の「ニジゲンノモリ」で開催した期間限定イベント「鬼滅の刃」が来場者数を牽引したほか、インバウンド需要も取り込んだ。コスト適正化の効果もあり、営業損失は 10億6,900万円 (前年同期は14億7,000万円の損失)と赤字幅が縮小している。
ライフソリューションセグメントは、売上高 70億5,600万円 (前年同期比 12.1%増 )、営業利益 4億900万円 (同 484.1%増 )と躍進した。新規学童クラブの運営拡大や家事代行サービスの順調な拡大に加え、万博での受託案件が収益に大きく寄与した。一方で、キャリアソリューション(人材紹介)は、企業の採用要件の高まりやシステム刷新に伴う一時的な生産性低下が響き、成約数が減少。売上高は 105億900万円 (同 2.5%減 )に留まった。
| セグメント | 売上高 | 前年同期比 | 営業利益 | 前年同期比 |
|---|---|---|---|---|
| HRソリューション | 2,112億円 | △0.7% | 103億円 | △5.0% |
| グローバル(海外) | 86億円 | +5.7% | 0.8億円 | △55.9% |
| ライフ(子育て等) | 70億円 | +12.1% | 4億円 | +484.1% |
| 地方創生・観光 | 59億円 | +20.4% | △10億円 | — |
| セグメント | 売上高 | 構成比 | 営業利益 | 営業利益率 |
|---|---|---|---|---|
| HRソリューション | 2,113億円 | 92% | 103億円 | 4.9% |
| グローバルソリューション | 87億円 | 4% | 82百万円 | 0.9% |
| ライフソリューション | 71億円 | 3% | 4億円 | 5.8% |
| 地方創生・観光ソリューション | 60億円 | 3% | -1,069百万円 | -17.9% |
財務状況と資本政策
2026年2月末時点の総資産は、前連結会計年度末比 357億6,100万円減 の 2,292億7,600万円 となった。この大幅な減少は、主に受託案件に係る顧客からの一時的な「預り金」が 279億3,200万円減少 したことに伴い、対応する「現金及び預金」が 528億8,500万円減少 したことが要因である。一方で、地方創生事業などへの積極的な投資により、有形固定資産は 103億8,700万円増加 した。
負債合計は 954億5,200万円 となり、前期末比で 284億5,200万円減少 した。預り金の減少に加え、買掛金の支払いが進んだことが背景にある。純資産は四半期純損失の計上や配当金の支払い( 29億5,600万円 )、自己株式の取得( 22億6,400万円 )により 133億8,240万円 (前期末比 5.2%減 )となったが、総資産の圧縮が上回った結果、自己資本比率は55.7%(前期末は50.9%)へと上昇し、財務の健全性は維持されている。
配当については、期末配当予想を 75.00円 (普通配当15円、特別配当60円)で据え置いた。業績の波はあるものの、株主還元への姿勢を継続している。
通期見通し
2026年5月期の通期連結業績予想については、売上高 3,100億円 (前期比 0.2%増 )、営業利益 5億円 、経常利益 18億円 、親会社株主に帰属する当期純損失 18億円 としている。BPOの構造転換やDX投資に伴うコスト負担を考慮し、前回の公表値から下方修正が行われた。足元では万博関連の収益寄与が見込まれる一方、下期以降もキャリア事業の回復やBPO新案件の立ち上げスピードが焦点となる。
| 項目 | 前回予想 | 今回修正 | 前期実績 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 3,300億円 | 3,100億円 | 3,094億円 |
| 営業利益 | 40億円 | 5億円 | 5億円 |
| 経常利益 | 55億円 | 18億円 | 12億円 |
| 当期純利益 | △5億円 | △18億円 | △85億円 |
リスクと課題
当面のリスクと課題として、以下の点が挙げられる。
- BPO事業の構造転換: 官公庁向けなどの大型スポット案件に代わる、高付加価値な民間・専門分野向け案件の獲得スピードが利益回復の鍵となる。
- 販管費の管理: ITインフラのコスト改定や退職給付関連費用の増加など、外部要因によるコスト増を上回る効率化が求められている。
- キャリア事業の生産性向上: 成約率が低下している人材紹介事業において、新システムの定着と人員体制の最適化による早期の立て直しが必要である。
- 万博後の事業継続性: 万博関連の特需が終了した後の、ライフソリューションや地方創生事業の自律的な成長維持が中長期的な焦点となる。
パソナグループの今回の決算は、まさに「産みの苦しみ」と「一時的な追い風」が混在した内容と言えます。最大の課題は、売上の約4割を占めるBPO事業が、コロナ禍等の特需終了(ピークアウト)から次の成長フェーズへ移行するまでの端境期にある点です。営業赤字が続いているのは、この減収影響をカバーするために必要なIT投資や人件費が先行しているためです。
一方で、経営資源を集中させている地方創生事業やライフソリューション事業が、万博関連の受託やイベント効果で着実に実績を積み上げている点はポジティブです。特に自己資本比率が50%を超え、預り金等の特殊要因を除いた実質的な財務基盤が強化されている点は、投資家にとって安心材料となります。
就職活動中の学生にとっては、同社が従来の人材派遣会社から、地方創生や社会課題解決を軸とした「総合ソリューション企業」へと急速に舵を切っている姿が見て取れます。万博という国家的大イベントへの深く関与している実績は、短期的な収益以上に、今後の事業機会拡大に向けた大きなブランド資産となるでしょう。今後は、特需に頼らないキャリア事業(人材紹介)の自律的な回復が、本格的な黒字化への最優先課題となります。
