ニッスイ・2026年3月期第3四半期、営業利益26.5%増の314億円——養殖好調で過去最高益を上方修正、4円の増配も発表
売上高
6,897億円
+4.0%
通期予想
9,280億円
営業利益
314億円
+26.5%
通期予想
380億円
純利益
223億円
+14.1%
通期予想
275億円
営業利益率
4.6%
ニッスイが発表した2026年3月期第3四半期累計(2025年4〜12月)決算は、売上高が前年同期比 4.0%増 の 6,897億円、営業利益が同 26.5%増 の 314億円 と大幅な増益を記録しました。南米の養殖事業における成績改善や北米の水産加工事業の回復が大きく寄与し、期初計画を大幅に上回るペースで業績が推移しています。これを受け、同社は通期の連結業績予想を上方修正し、あわせて期末配当を前回予想から 4円増配 の 18円(年間 32円)とすることを決定しました。

業績のポイント:養殖と海外加工が牽引し、利益は過去最高水準へ
当第3四半期の累計業績は、水産・食品の両主軸事業が堅調に推移したことで、非常に力強い結果となりました。売上高は 6,897億円(前年同期比 +264億円)、営業利益は 314億円(同 +65億円)となり、特に利益面では進捗率が通期計画に対して 91.1% に達するなど、極めて高い水準にあります。
増益の最大の原動力となったのは、水産事業における養殖部門の劇的な改善です。ブリやマグロといった国内漁獲が堅調だったことに加え、南米(チリ)のサーモン養殖において、魚病対策の徹底による生残率の向上と販売価格の上昇がダブルで利益を押し上げました。北米の水産加工もフィレの増産やすり身価格の引き上げが奏功し、国内の商事部門が鮭鱒(けいそん)の市況安で苦戦した分を十分に補って余りある成長を見せました。
食品事業についても、国内のチルド食品がコンビニエンスストア(CVS)向けを中心に好調を維持したほか、欧州での水産フライなどの販売エリア拡大が収益に貢献しました。原材料費や人件費の上昇というコスト圧力を、販売価格の適正化と効率的な生産体制によって跳ね返した形です。
セグメント別動向:水産事業が142%増益の大躍進、食品も底堅く推移
各セグメントの動向を見ると、水産事業の収益性改善が際立っています。同セグメントの営業利益は 124億円 と、前年同期(51億円)から 142.7%増 と大幅に伸長しました。特にチリの養殖子会社(SA社)において、一時期苦戦していた養殖成績がV字回復を遂げたことが象徴的です。
食品事業は売上高が 3,756億円(前年比 5.5%増)、営業利益が 240億円(同 1.4%増)となりました。国内市場では米価や「すり身」の原料価格上昇により加工食品が減益を余儀なくされましたが、好調なチルド部門がカバーしました。また海外では、北米の業務用販売がインフレの影響で伸び悩んだものの、家庭用冷凍食品が底堅く推移し、全体では微増益を確保しました。
| セグメント名 | 売上高 | 前年同期比 | 営業利益 | 前年同期比 | 営業利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 水産事業 | 2,791億円 | +3.2% | 124億円 | +142.7% | 4.5% |
| 食品事業 | 3,756億円 | +5.5% | 240億円 | +1.4% | 6.4% |
| ファインケミカル事業 | 114億円 | +6.2% | 2億円 | +20.1% | 2.0% |
| 物流事業 | 127億円 | +0.4% | 20億円 | ▲10.4% | 16.4% |
通期見通し:営業利益380億円へ上方修正、過去最高益更新を見込む
足元の好調な業績進捗を踏まえ、ニッスイは2026年3月期の通期予想を上方修正しました。売上高は前回予想から 280億円 増の 9,280億円、営業利益は 35株 増の 380億円 を見込んでいます。これは前期実績と比較しても 19.6% の営業増益にあたり、過去最高益を更新する見通しです。
修正の背景には、第4四半期(1〜3月)においても、養殖事業のコスト改善や、国内食品事業での価格改定効果が継続するという判断があります。また、これに伴い株主還元も強化します。期末配当を当初予定の 14円 から 18円 へと増額し、年間配当は前期の28円から4円増の 32円 となる予定です。配当性向の向上を通じて、成長と還元のバランスを両立させる経営姿勢を鮮明にしています。
| 項目 | 前回予想(5月) | 今回修正(2月) | 前期実績 | 修正幅 |
|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 9,000億円 | 9,280億円 | 8,861億円 | +3.1% |
| 営業利益 | 345億円 | 380億円 | 317億円 | +10.1% |
| 当期純利益 | 250億円 | 275億円 | 253億円 | +10.0% |
財務状況と戦略トピック:戦略的投資の拡大とサステナブル経営の推進
財務面では、総資産が前期末比 519億円 増の 6,868億円 に拡大しました。これは運転資本の増加に加え、将来の成長に向けた食品工場の新設や増強といった設備投資が加速していることを反映しています。キャッシュフロー計算書を見ると、営業キャッシュフローは 240億円 のプラスを確保する一方、投資キャッシュフローは 334億円 のマイナスとなっており、戦略的投資が先行している状況です。
特筆すべき戦略トピックとして、南米のサーモン養殖企業「ヤドラン社」のグループ化による生産能力の拡大が挙げられます。同社はチリでの生産能力を現在の2.5倍にあたる 8万トン強 まで引き上げる計画です。また、日本国内でも2030年までにサーモン生産量 1万トン を目指し、岩手県での事業化を推進するなど、グローバルな水産バリューチェーンの強靭化を急いでいます。
さらに、環境配慮型の経営として、本邦初となる「ブルー・ネイチャーボンド(国内普通社債)」の発行を予定しています。調達資金の全額を持続可能な養殖事業に充当する方針で、生物多様性に配慮した「責任ある養殖」の拡大を財務面からも支える構えです。
リスクと課題:コスト増と物流の「2024年問題」が重しに
業績は好調ですが、いくつかの懸念材料も散見されます。特に以下の要因には注意が必要です。
- 原材料費の再高騰: 国内での米価上昇や、世界的なすり身原料の価格上昇が、食品事業の利益率を圧迫するリスクがあります。
- 物流コストの上昇: 物流事業においては、いわゆる「2024年問題」に伴う人件費の増加や燃料費の高騰により、前年同期比で 10.4%減益 となっています。グループ全体での物流効率化が急務です。
- 相場変動リスク: 南米の鮭鱒相場や為替の動向は、水産事業の収益を大きく左右します。特に第4四半期には、在池魚(生け簀にいる魚)の評価損益が発生する可能性があり、利益の変動要因となります。
これらのリスクに対し、同社は2026年3月〜4月にかけて家庭用・業務用の両面でさらなる価格改定を予定しており、コストアップ分を吸収して利益水準を維持する考えです。
今回の決算で最も注目すべきは、ニッスイが「水産物価格の変動に左右される会社」から「養殖の高度化によって利益を安定創出できる会社」へと変貌を遂げつつある点です。
- かつての業績不振の主因だったチリの養殖事業が、生残率の劇的な改善(魚病対策の成功)によって、今や最強の利益柱となっています。これは単なる市況の追い風ではなく、技術的な「実力の向上」と評価できます。
- 国内食品事業も、不採算な加工品から、CVS向けチルド商品や「E調理(簡便調理)」といった高付加価値カテゴリーへシフトしており、ポートフォリオの質の向上が見られます。
- 懸念点は物流事業の減益に象徴される「国内コスト増」ですが、これを通期での価格改定(30億円の利益改善見込み)でカバーしようとする強気な姿勢からは、ブランド力への自信が伺えます。
就職活動中の学生にとっても、グローバルな食料供給(サステナブル・シーフード)という社会的意義と、過去最高益を更新し続ける高い収益性が両立している点は、非常に魅力的なポイントと言えるでしょう。
