神戸製鋼所・2026年3月期通期、営業利益18.2%減の1,298億円——鉄鋼需要の停滞や電力の点検が響くも、次期は増益回復を予想
売上高
2.4兆円
-4.6%
通期予想
2.6兆円
営業利益
1,299億円
-18.2%
通期予想
1,500億円
純利益
937億円
-22.0%
通期予想
1,000億円
営業利益率
5.3%
神戸製鋼所が11日に発表した2026年3月期通期連結決算は、売上高が前期比 4.6%減 の 2兆4,365億円、営業利益が同 18.2%減 の 1,298億円 と減収減益となった。建設用鋼材の需要低迷や、電力事業における大規模な定期点検による稼働減が利益を押し下げた格好だ。一方で、機械事業の採算改善や「稼ぐ力の強化」を掲げた中期経営計画の進捗により、次期(2027年3月期)は純利益 1,000億円 への反転増を見込んでいる。
神戸製鋼所 2026年3月期 通期決算
さくら × けんじ の対話形式解説
業績のポイント
当連結会計年度の業績は、外部環境の変化と一過性要因が重なり、減収減益となった。売上高は 2兆4,365億円(前期比 4.6%減)、営業利益は 1,298億円(同 18.2%減)、親会社株主に帰属する当期純利益は 937億円(同 22.0%減)となった。前年度に建設機械セグメントで計上された欧州の補償金収入という特殊要因が剥落したことも、利益を押し下げる要因の一つとなった。
利益面では、鉄鋼アルミ事業における販売数量の減少とメタルスプレッド(原料価格と製品価格の差)の悪化が響いたほか、電力事業での神戸発電所3号機の定期点検延長による売電収入の減少が大きく影響した。一方で、物価上昇に対する価格転嫁や自助努力によるコストアップの抑制を継続。機械事業を中心に受注案件の進捗と採算改善が進んだことが、全体の利益を下支えした。
| 項目 | 2025年3月期(実績) | 2026年3月期(実績) | 前年比 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 2兆5,550億円 | 2兆4,365億円 | △4.6% |
| 営業利益 | 1,587億円 | 1,298億円 | △18.2% |
| 経常利益 | 1,571億円 | 1,213億円 | △22.8% |
| 当期純利益 | 1,201億円 | 937億円 | △22.0% |
業績推移(通期)
セグメント別動向
主力の鉄鋼アルミ事業は、建設業界の人手不足や資材高騰を背景とした需要停滞の影響を真正面から受けた。鋼材の販売数量が伸び悩み、在庫評価影響の悪化も重なったことで、セグメント経常利益は 28億円(前期比 207億円減)と大幅な減益を余儀なくされた。アルミ板についても、中国子会社の関連会社化に伴う数量減や在庫評価益の縮小により、9億円の赤字 を計上している。
一方で、機械事業は堅調な推移を見せている。等方圧加圧装置(IP装置)などの好調な需要を背景に、売上高は 2,827億円(同 6.6%増)、経常利益は 467億円(同 141億円増)と大幅な増益を達成した。サービス案件の増加による採算改善が利益に貢献しており、グループ内の成長エンジンとしての存在感を示した。
電力事業については、前年比で減益となったものの、一過性の要因が強い。神戸発電所3号機の定期点検延長に加え、燃料費調整の時期ずれ影響が縮小したことが主因である。経常利益は 347億円(同 175億円減)となったが、次期は稼働日数の増加により回復を見込んでいる。
| セグメント(経常利益) | 2025年3月期実績 | 2026年3月期実績 | 増減額 |
|---|---|---|---|
| 鉄鋼アルミ | 236億円 | 28億円 | △207億円 |
| 素形材 | 107億円 | 87億円 | △20億円 |
| 溶接 | 52億円 | 58億円 | +6億円 |
| 機械 | 325億円 | 467億円 | +141億円 |
| 建設機械 | 187億円 | 123億円 | △64億円 |
| 電力 | 523億円 | 347億円 | △175億円 |
| セグメント | 売上高 | 構成比 | 営業利益 | 営業利益率 |
|---|---|---|---|---|
| 鉄鋼アルミ | 9,969億円 | 41% | 29億円 | 0.3% |
| 機械 | 2,827億円 | 12% | 467億円 | 16.5% |
| 電力 | 2,032億円 | 8% | 348億円 | 17.1% |
財務状況と資本政策
財務体質の改善は着実に進展している。2026年3月期末の総資産は 2兆8,651億円 と前期末から微減したが、借入金の返済を進めたことで負債が 1,192億円 減少。一方で利益の積み上げにより純資産は増大し、自己資本比率は44.0%(前期末比 3.8ポイント上昇)まで向上した。これにより、経営基盤の安定性が一段と高まったと言える。
株主還元については、継続的かつ安定的な配当を基本方針としている。当期の期末配当は1株当たり 40円 とし、中間配当と合わせた年間配当は 80円(配当性向 33.6%)を決定した。次期についても、業績の回復を見込みつつ年間 80円 の配当を維持する方針を示しており、株主還元への姿勢を維持している。
通期見通し
2027年3月期(次期)の連結業績は、増収増益の回復シナリオを描いている。売上高は 2兆5,600億円(前期比 5.1%増)、営業利益は 1,500億円(同 15.5%増)、当期純利益は 1,000億円(同 6.7%増)を見込む。素材系事業や建設機械における数量面の回復に加え、在庫評価影響の改善を前提としている。
| 項目 | 前回予想 | 今回予想 | 前期実績 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | - | 2兆5,600億円 | 2兆4,365億円 |
| 営業利益 | - | 1,500億円 | 1,298億円 |
| 親会社株主に帰属する純利益 | - | 1,000億円 | 937億円 |
| 1株当たり配当金 | - | 80.00円 | 80.00円 |
リスクと課題
今後の懸念材料として、会社側は以下のリスクを挙げている。
- 外部環境の不確実性: 中東情勢の緊迫化や米国の通商政策動向など、グローバルな政治・経済情勢の変化が輸出や原材料価格に与える影響。
- コスト高騰: 原油価格の高騰に伴う船舶用燃料やエネルギー価格、諸資材価格の上昇。次期見通しではこれらの減益リスクを約 100億円 織り込んでいる。
- 需要回復の遅れ: 建設業界における人手不足やコスト増が解消されず、国内の鋼材需要や建設機械需要の低迷が長期化するリスク。
神戸製鋼所の今期決算は、鉄鋼の需要減と電力事業の点検という「素材・インフラ事業」特有の変動要因が重なった結果となりました。
注目すべきは、単なる減益に留まらず、機械事業が利益を大幅に伸ばしてグループ全体のバランサーとして機能している点です。IP装置などの高付加価値製品が利益率を押し上げており、重厚長大型のビジネスモデルから、より技術力・サービスを強みとする高収益構造への転換が進んでいることが窺えます。
自己資本比率が44%まで改善したことは、就活生にとっても「安定性」という面でポジティブな材料です。次期の回復予想は、鉄鋼需要の底打ちと電力の稼働正常化が前提となっており、為替や原材料価格の変動をいかに自助努力で吸収できるかが焦点となるでしょう。
