キオクシアホールディングス株式会社 の会社詳細
キオクシアホールディングス株式会社
キオクシアホールディングス
2026年3月期 第3四半期

キオクシアHD・2026年3月期Q3、営業利益は累計34%減もQ3単体で加速——AIサーバー需要で単価上昇、通期大幅増益へ

キオクシア
半導体
AIサーバー
増収増益
通期上方修正
データセンター
SSD
自己資本比率
四日市工場
上場後初決算
第3四半期累計期初から9ヶ月間の累計値(前年同期比)

売上高

1.3兆円

-1.8%

通期予想

2.2兆円

進捗率61%

営業利益

2,736億円

-34.0%

通期予想

7,096億円

進捗率39%

純利益

1,468億円

-41.8%

通期予想

4,538億円

進捗率32%

営業利益率

20.5%

キオクシアホールディングス(HD)が発表した2026年3月期第3四半期(4〜12月)決算は、累計の営業利益が前年同期比34.0%減の2735億円となった。前期の急回復の反動で累計では減益となったものの、第3四半期(10〜12月)単体ではAI向け需要を背景に出荷量と単価がともに上昇し、前四半期から利益が大幅に拡大している。

業績のポイント

2026年3月期第3四半期累計の連結業績は、売上収益が前年同期比 1.8%減1兆3,347億7,600万円、営業利益が同 34.0%減2,735億7,400万円 となった。一見すると減収減益だが、文脈を読み解くには「四半期ごとの推移」に注目すべきだ。第3四半期(10〜12月)単体の売上収益は 5,436億円 で、前四半期(7〜9月)の 4,483億円 から 21% 増加。営業利益も単体で 1,428億円 を稼ぎ出し、前四半期比で 66% もの大幅な増益を達成した。

この急加速の主因は、生成AIの普及に伴うデータセンター向けSSDの旺盛な需要だ。平均販売単価(ASP)が上昇し、出荷量も記憶容量ベースで拡大したことが寄与した。前年同期は市況の底打ち局面で急激な回復を見せていたため、累計比率ではマイナスとなっているが、足元の収益力は極めて強い。Non-GAAP営業利益率は第3四半期単体で 26.6% に達しており、メモリ業界の好調なサイクルを完全に取り込んでいると言える。

業績推移(通期)

売上高営業利益|当期累計通期予想残

セグメント別動向

当社はメモリ事業の単一セグメントだが、アプリケーション別の売上収益が市場の変遷を如実に映し出している。

  • SSD & ストレージ: 売上収益は 7,623億円(累計)。第3四半期単体では 3,004億円 となり、前四半期比で 23%増。エンタープライズ向けSSDがAIサーバー用途で飛躍的に伸びており、利益率改善の牽引車となった。
  • スマートデバイス: 売上収益は 4,226億円(累計)。第3四半期単体では 1,863億円 で、前四半期比 18%増。新型AIスマートフォンの投入や、車載・産業機器向けの組み込み式メモリが堅調に推移した。
  • その他: 売上収益は 1,498億円(累計)。リテール向けのSDカードや合弁相手であるウエスタンデジタル(Sandiskグループ)向けの供給が含まれる。

総じて、汎用的なPC・スマホ向けから、高付加価値なAIデータセンター向けへのシフトが鮮明になっており、これが単価上昇(ASPアップ)という形で結実している。

セグメント売上高構成比営業利益営業利益率
SSD & ストレージ7,623億円57%
スマートデバイス4,226億円32%
その他1,498億円11%

財務状況と資本政策

当四半期は、2024年12月の新規上場を経た資本構造の劇的な改善が目立つ。総資産は 3兆1,948億円 と前期末から 2,752億円 増加。注目すべきは自己資本の厚みだ。親会社の所有者に帰属する持分は 9,785億円 となり、自己資本比率は前期末の 25.3% から 30.6% へと 5.3ポイント 上昇した。

資本政策では、2025年7月に実施した「非転換型優先株式」の償還(3,230億円)が大きなトピックだ。これを新たな長期借入や米ドル建て無担保普通社債(約 3,267億円 相当)の発行による低コストな資金へ置き換えたことで、資本効率の最適化を図った。営業キャッシュフローは累計で 3,222億円 の黒字を確保しており、これを 2,137億円 の有形固定資産取得(主に四日市工場での最先端メモリ生産ライン)に充てるという、成長投資の再循環が機能し始めている。

リスクと課題

絶好調に見える足元の業績だが、フラッシュメモリ業界特有のボラティリティ(変動性)は常に意識する必要がある。

  • 市況の反動リスク: 現在のAIブームによる需要急増は力強いが、主要顧客であるデータセンター事業者の在庫積み増しが一巡すれば、再び単価の下落局面が訪れる可能性がある。
  • 地政学・通商政策: 関税を含む通商政策の変化や地政学リスクが世界経済の見通しを不透明にしており、サプライチェーンへの影響が懸念される。
  • 巨額投資の継続: 次世代メモリの競争力を維持するためには、年間数千億円規模の設備投資(Capex)と研究開発が不可欠だ。利益が出ているうちに、いかに次世代の「BiCS FLASH」への移行をスムーズに進め、コスト競争力を高められるかが長期的な課題となる。

通期見通しと戦略トピック

通期業績予想はレンジ形式で開示されており、売上収益は 2兆1,797億〜2兆2,697億円(前期比 27.7〜33.0%増)、営業利益は 7,095億〜7,995億円(同 57.1〜77.0%増)と、過去最高水準の利益を見込む。第4四半期(1〜3月)単体でも売上収益 8,450億〜9,350億円 を見込んでおり、AI需要の「本番」はここからと言わんばかりの強気な見通しだ。

また、戦略面ではキオクシア株式会社がウエスタンデジタル(Sandisk)との四日市工場における合弁契約を延長したことが重要だ。これにより2034年まで共同生産体制が維持される。この契約延長に伴い、2026年から2029年にかけて総額 11億6,500万米ドル(約1,800億円規模)の「製造サービス料」等を分割して受領することも決定した。これは将来のキャッシュフローの安定に寄与するだけでなく、業界再編の思惑が絶えない同社にとって、パートナーシップの強固さを改めて市場に示す格好となった。