デクセリアルズ・2026年3月期Q3、売上高は横ばいの872億円——成長投資に伴う固定費増で営業利益は7.3%減
売上高
873億円
+0.2%
通期予想
1,140億円
営業利益
305億円
-7.3%
通期予想
390億円
純利益
213億円
-8.9%
通期予想
260億円
営業利益率
34.9%
デクセリアルズが発表した2026年3月期第3四半期(4〜12月)連結決算は、売上高が前年同期比 0.2%増 の 872億9,600万円 とほぼ横ばいでした。利益面では、光半導体向けを中心とした将来の成長に向けた積極的な投資に伴い固定費が増加し、営業利益は同 7.3%減 の 304億5,100万円 となりました。データセンター向け製品や高付加価値なカメラモジュール用材料は好調を維持したものの、一部製品の販売終了や為替の円高推移が利益を押し下げる要因となりました。
業績のポイント
当第3四半期の累計業績は、売上高が 872億9,600万円(前年同期比 +0.2%)、営業利益が 304億5,100万円(同 -7.3%)となりました。親会社の所有者に帰属する四半期利益は 212億6,700万円(同 -8.9%)で着地しています。売上高が微増に留まった背景には、前年同期にあった蛍光体フィルムの販売終了(販売終息)や、ノートPC向け反射防止フィルムの引き渡し時期が第4四半期へ後ろ倒しになったことが影響しています。
利益面での減少は、主として中長期的な成長を見据えた投資によるものです。特に光半導体事業の拡大に向けた設備投資や研究開発に伴い、減価償却費などの固定費が増加しました。また、為替レートが前年同期と比較して円高方向に振れたことも、輸出比率の高い同社にとって利益の目減り要因となりました。ただし、事業の効率性を示すEBITDA(利払い前・税引き前・減価償却前利益)は 369億7,800万円(同 +0.5%)とプラスを維持しており、キャッシュを稼ぐ力自体は損なわれていない状況です。
業績推移(通期)
セグメント別動向
主力の2セグメントにおいて、明暗が分かれる形となりました。電子材料部品が牽引役となる一方、光学材料部品は過渡期の影響を受けています。
電子材料部品セグメント
売上高は 502億9,200万円(前年同期比 +9.3%)、セグメント利益(事業利益)は 194億6,800万円(同 +6.8%)と増収増益を達成しました。スマートフォン等のカメラモジュール向けに、高付加価値製品である「形状加工異方性導電膜(ACF)」の採用が拡大したことが寄与しています。また、生成AIの普及に伴うデータセンター需要を背景に、光トランシーバー用の高速応答フォトダイオードや、停電時のバックアップ電源(BBU)向けヒューズの販売が力強く推移しました。
光学材料部品セグメント
売上高は 376億7,200万円(前年同期比 -9.7%)、事業利益は 120億200万円(同 -12.0%)の減収減益となりました。自動車向けの反射防止フィルム(ARF)は新規顧客への採用が進み堅調でしたが、利益率の高かったノートPC向けARFの納入遅れが響きました。加えて、前期末で販売を終了した蛍光体フィルムの欠落分を、新製品の伸びだけで補いきれなかった格好です。
| セグメント名 | 売上高 | 前年同期比 | 事業利益 | 前年同期比 |
|---|---|---|---|---|
| 光学材料部品 | 376億円 | △9.7% | 120億円 | △12.0% |
| 電子材料部品 | 502億円 | +9.3% | 194億円 | +6.8% |
| 連結合計 | 872億円 | +0.2% | 314億円 | △1.2% |
| セグメント | 売上高 | 構成比 | 営業利益 | 営業利益率 |
|---|---|---|---|---|
| 光学材料部品 | 377億円 | 43% | 120億円 | 31.9% |
| 電子材料部品 | 503億円 | 57% | 195億円 | 38.7% |
財務状況と資本政策
2025年12月末時点の資産合計は 1,555億4,500万円 となり、前期末から 37億2,400万円 増加しました。光半導体分野を中心とした成長投資を継続しており、有形固定資産が 185億5,600万円 増加しています。一方で、手元資金である「現金及び現金同等物」は、設備投資や自己株式の取得により 203億3,000万円 減少し、146億4,900万円 となりました。
資本政策においては、株主還元と資本効率の向上を重視する姿勢を鮮明にしています。同社は2025年11月の取締役会決議に基づき、総額 約50億円(1,677,100株)の自己株式取得を実施しました。また、2024年10月に実施した1株から3株への株式分割後も配当水準を維持しており、通期では1株当たり 58円(分割前換算で174円)の配当を予定しています。親会社所有者帰属持分比率は 65.5% と、引き続き高い財務健全性を保っています。
通期見通しとリスク要因
2026年3月期の通期業績予想については、前回公表(2025年11月12日)の数値を据え置いています。売上高は前期比 3.3%増 の 1,140億円、営業利益は同 1.9%減 の 390億円 を見込んでいます。第4四半期には、後ろ倒しになっていたノートPC向けARFの出荷が見込まれるほか、車載向け製品の積み上げを狙います。
| 項目 | 前回予想 | 今回修正 | 前期実績 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 1,140億円 | 修正なし | 1,103億円 |
| 営業利益 | 390億円 | 修正なし | 397億円 |
| 親会社株主純利益 | 260億円 | 修正なし | 277億円 |
今後の懸念材料としては、主要顧客であるスマートフォンやPCメーカーの在庫調整の動き、および半導体市場の需給バランスの変化が挙げられます。また、同社は海外売上比率が高いため、為替相場の急激な変動は業績を左右する大きなリスク要因となります。同社はこれらの環境変化に対し、高付加価値なニッチトップ製品への集中と、成長分野であるフォトニクス(光)領域への投資を加速させることで対応する方針です。
デクセリアルズの今決算は、まさに「踊り場での攻めの投資」を象徴する内容でした。売上高が横ばいの中で営業利益が減少している点は一見ネガティブに見えますが、中身を紐解くと、データセンター関連という成長エンジンが着実に育っていることが分かります。
特にフォトニクス(光関連)の伸びは、AIサーバー市場の拡大というメガトレンドに乗っており、同社の「ニッチトップ戦略」が新領域でも機能し始めている証左と言えます。光学材料の不振は製品ポートフォリオの入れ替え時期に伴う一時的な側面が強く、反射防止フィルムの車載展開がどこまで利益貢献を早められるかが今後の焦点となるでしょう。
投資家目線では、利益減の局面でも約50億円の自社株買いを断行する資本効率へのこだわりは高く評価できるポイントです。就活生の視点では、既存のスマホ依存から脱却し、光半導体や車載という次なる成長領域へリソースを集中させている、変化に強い企業の姿が見えてきます。
