業界ダイジェスト
味の素株式会社 の会社詳細
味の素株式会社
味の素
2026年3月期 通期

味の素・2026年3月期、純利益91.6%増の1,346億円——半導体向け電子材料が躍進、本社ビル売却益も寄与

増収増益
半導体材料
生成AI関連
累進配当
自社株買い
構造改革
ヘルスケア
食品業界
資産売却
通期1年間の確定値(前年比)

売上高

1.6兆円

+3.5%

通期予想

1.7兆円

進捗率92%

営業利益

1,994億円

+75.0%

通期予想

1,970億円

進捗率101%

純利益

1,347億円

+91.6%

通期予想

1,200億円

進捗率112%

営業利益率

12.6%

味の素が発表した2026年3月期通期決算は、親会社株主に帰属する当期純利益が前期比 91.6%増1,346億円 と大幅な増益を記録しました。主力の調味料事業が国内外で堅調に推移したことに加え、AI市場の拡大を背景とした半導体パッケージ用絶縁材料(ABF)などのヘルスケア事業が成長を牽引しています。また、構造改革の一環として実施した本社ビルの売却益も利益を大きく押し上げる要因となりました。

トーク

味の素 2026年3月期 通期決算

さくら × けんじ の対話形式解説

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業績のポイント

2026年3月期の連結業績は、売上高が前期比 3.5%増1兆5,837億円、本業の儲けを示す事業利益は同 13.7%増1,811億円 となりました。世界的なインフレに伴う原材料価格や物流費の高騰が継続したものの、日本国内および海外市場での適切な価格転嫁と、高付加価値商品の販売構成比の向上が奏功しました。

特筆すべきは利益面の大幅な伸長です。事業利益は、ヘルスケア等セグメントの大幅な増益と調味料・食品セグメントの安定した成長により、過去最高水準を更新しました。さらに、営業利益ベースでは、当期中に実施した固定資産(本社ビル土地および建物)の譲渡による売却益が加わり、前期比 75.0%増1,994億円 に達しています。純利益もこれらに伴い大きく跳ね上がり、1株当たり当期利益は 138.36円(前期比 +68.59円)となりました。

項目2025年3月期2026年3月期前期比
売上高1兆5,305億円1兆5,837億円+3.5%
事業利益1,593億円1,811億円+13.7%
営業利益1,139億円1,994億円+75.0%
親会社株主帰属純利益702億円1,346億円+91.6%

業績推移(通期)

売上高営業利益

セグメント別動向

主力である調味料・食品セグメントは、売上高 9,369億円(前期比 +4.6%)、事業利益 1,430億円(同 +6.6%)と増収増益を確保しました。国内では単価上昇効果により栄養・加工食品が大幅な増収となったほか、海外でも為替影響と旺盛な需要を背景に販売が拡大しました。一方で、加工用うま味調味料を扱うソリューション&イングリディエンツ事業は、一部の販売減により減収となりました。

冷凍食品セグメントは、売上高 2,903億円(同 +0.3%)と横ばいでしたが、事業利益は 84億円(同 △35.0%)と大幅な減益に見舞われました。主に北米市場における原材料コストの増加や競争激化に伴う販促費の投入が利益を圧迫しました。収益性の改善が喫緊の課題となっています。

ヘルスケア等セグメントは、売上高 3,415億円(同 +4.0%)、事業利益 662億円(同 +45.1%)と、利益成長のエンジンとして存在感を示しました。子会社売却の影響を除くと実質的に大幅な増収です。特に生成AI需要の爆発的増加を追い風に、半導体パッケージ用層間絶縁材料「ABF」を含むファンクショナルマテリアルズが極めて好調に推移しました。医薬中間体等の受託開発(CDMO)事業も堅調な増益を達成しています。

セグメント売上高前期比事業利益前期比
調味料・食品9,369億円+4.6%1,430億円+6.6%
冷凍食品2,903億円+0.3%84億円△35.0%
ヘルスケア等3,415億円+4.0%662億円+45.1%
セグメント売上高構成比営業利益営業利益率
調味料・食品9,369億円59%1,430億円15.3%
冷凍食品2,903億円18%84億円2.9%
ヘルスケア等3,415億円22%662億円19.4%

財務状況と資本政策

当連結会計年度末の総資産は、前期末比 912億円 増加の 1兆8,123億円 となりました。円安進行に伴う在外資産の評価替えや、成長投資に向けた有形固定資産の取得が主な要因です。親会社所有者帰属持分比率は 42.5% と、健全な財務基盤を維持しています。

資本政策においては、強力な株主還元姿勢を鮮明にしています。「累進配当政策」を掲げ、2026年3月期の年間配当は前期から8円増配の 48円(株式分割調整後)としました。また、機動的な資本効率の向上を目的として、当期中に総額 1,300億円 の自社株買いを実施しました。これにより、1株当たりの価値向上とROEの改善を同時に追求しています。

通期見通しとリスク要因

2027年3月期の業績予想については、売上高 1兆7,230億円(前期比 +8.8%)、事業利益 1,970億円(同 +8.7%)と引き続き成長路線を見込んでいます。配当もさらに2円増配の年間 50円 を予定しています。ただし、純利益については前期に計上した本社ビル売却益の反動により、1,200億円(同 △10.9%)となる見通しです。

経営上の不透明要因として、特に中東情勢の緊迫化に伴うサプライチェーンへの影響や、エネルギー価格の再上昇を挙げています。想定為替レートは 1ドル=150円 と設定していますが、為替の乱高下は海外事業の比率が高い同社にとって依然として大きなリスク要因です。これらに対し、高付加価値化の徹底と徹底したコストダウンにより、利益成長を維持する方針です。

項目2026年3月期実績2027年3月期予想増減率
売上高1兆5,837億円1兆7,230億円+8.8%
事業利益1,811億円1,970億円+8.7%
親会社株主帰属純利益1,346億円1,200億円△10.9%
AIアナリストの視点

今回の決算で最も注目すべきは、味の素が「食品メーカー」から「高付加価値バイオ・ファインケミカル企業」への変貌を数字で証明した点です。

特にヘルスケア事業、その中でも半導体絶縁材料(ABF)の利益成長率は圧倒的で、営業利益全体の質を大きく変えています。冷凍食品事業が北米で苦戦している点は懸念材料ですが、不採算アセット(本社ビルや一部子会社)の整理を迅速に進め、その売却資金を成長領域や株主還元(1,300億円の自社株買い)に充当する経営スピードは、従来の日本企業には珍しいアグレッシブさを感じさせます。

今後は、中東情勢などの外部リスクをこなしつつ、AI需要という強力な追い風をどれだけ利益に変換できるかが焦点となるでしょう。就活生にとっては、調味料だけでなくテクノロジーの最先端に深く関わる企業としての側面が、強力な志望動機になり得る内容です。