横浜ゴム・2026年12月期Q1、事業利益が84.6%増の444億円——欧州・インド好調で通期予想を上方修正
売上高
3,038億円
+10.4%
通期予想
1.3兆円
営業利益
260億円
+34.5%
通期予想
1,915億円
純利益
147億円
+72.6%
通期予想
1,090億円
営業利益率
8.6%
横浜ゴムが発表した2026年12月期第1四半期(1〜3月)決算は、売上収益が前年同期比 10.4%増 の 3,038億円 、本業の儲けを示す事業利益が同 84.6%増 の 444億円 と大幅な増収増益となった。米国工場の閉鎖に伴う一時費用 130億円 を営業費用として計上したものの、欧州での高付加価値タイヤ販売やインド市場の開拓が奏功し、これらを十分に補った。好調な滑り出しを受け、同社は通期の業績予想を 上方修正 している。
業績のポイント
当第1四半期の売上収益は 3,038億円 (前年同期比 +10.4% )となり、第1四半期として好調な実績を収めた。利益面では、事業利益が 444億円 (同 +84.6% )、営業利益が 260億円 (同 +34.5% )に達している。親会社の所有者に帰属する四半期利益は 147億円 (同 +72.6% )と大幅な伸びを記録した。
増益の主な要因は、タイヤ消費財における 高付加価値商品の販売拡大 と、オフハイウェイタイヤ(OHT)事業の成長だ。米国セーラム工場の閉鎖に関連して 130億円 の一時費用を計上したものの、原材料価格の安定や抜本的なコスト改善、さらには構造改革による内部努力が大きく寄与した。また、為替が円安方向に振れたことも、海外売上比率の高い同社にとって追い風となった。
| 指標 | 2026年12月期 Q1実績 | 前年同期実績 | 前年同期比 |
|---|---|---|---|
| 売上収益 | 303,806百万円 | 275,118百万円 | +10.4% |
| 事業利益 | 44,439百万円 | 24,072百万円 | +84.6% |
| 営業利益 | 26,007百万円 | 19,340百万円 | +34.5% |
| 四半期利益 | 14,717百万円 | 8,525百万円 | +72.6% |
業績推移(通期)
セグメント別動向
主力であるタイヤセグメントは、売上収益が 2,781億円 (前年同期比 +11.1% )、事業利益が 420億円 (同 +89.1% )と、グループ全体の成長を力強く牽引した。消費財タイヤでは、中国での日系メーカー不振の影響はあったものの、国内での販売活動が奏功したほか、欧州で高利益率の ハイインチ品 が大きく伸長した。また、インドや中国などの成長市場で新規取引先の開拓が順調に進んだことも、売上高の底上げに直結している。
OHT(オフハイウェイタイヤ)事業については、厳しい需要環境が続く中でも販売拡大に注力し、農業機械用タイヤのシェア向上を実現した。市販用では「Mitas(ミタス)」や「Alliance(アライアンス)」といったマルチブランド戦略を推進した結果、北米市場の回復も相まって前年同期を上回る実績を確保している。これにより、タイヤセグメントの利益率は前年同期の 8.9% から 15.1% へと劇的に改善した。
MB(マルチプル・ビジネス)セグメントは、売上収益が 240億円 (前年同期比 +4.2% )、事業利益が 22億円 (同 +21.2% )となった。ホース配管事業は北米自動車メーカーの減産影響により苦戦したが、工業資材事業がこれをカバーした。特にコンベヤベルトの安定したシェア維持に加え、防衛装備品の売上が伸長したことが利益を押し上げている。
| セグメント | 売上収益 | 前年同期比 | 事業利益 | 利益率 |
|---|---|---|---|---|
| タイヤ | 278,118百万円 | +11.1% | 42,019百万円 | 15.1% |
| MB | 23,985百万円 | +4.2% | 2,237百万円 | 9.3% |
| その他 | 1,702百万円 | △4.5% | 180百万円 | 10.6% |
| セグメント | 売上高 | 構成比 | 営業利益 | 営業利益率 |
|---|---|---|---|---|
| タイヤ | 2,781億円 | 92% | 420億円 | 15.1% |
| MB | 240億円 | 8% | 22億円 | 9.3% |
財務状況と資本政策
2026年3月末時点の資産合計は、前連結会計年度末から 478億円 増加し、 2兆462億円 となった。これは主に有形固定資産の取得や、棚卸資産の増加によるものである。負債についても有利子負債が増加し、 9,936億円 となっているが、親会社所有者帰属持分比率は 51.0% (前期末は51.6%)と、依然として高い財務健全性を維持している。
資本政策においては、積極的な株主還元を継続する方針だ。通期の1株当たり配当予想は、前期実績の 134円 から大幅に増額し、 172円 (中間62円、期末110円)を予定している。中期経営計画「YX2026」に基づき、成長投資と株主還元のバランスを重視した経営判断が示されている。
通期見通しの上方修正
第1四半期の好成績を受け、通期の連結業績予想を全指標で引き上げた。売上収益は前期比 5.3%増 の 1兆3,000億円 、事業利益は同 12.9%増 の 1,880億円 を見込む。営業利益についても、工場閉鎖費用を織り込みながらも 1,915億円 (同 +25.2% )と、当初予想を上回る過去最高水準を目指す計画だ。
| 項目 | 今回修正予想 | 前回予想 | 前期実績 |
|---|---|---|---|
| 売上収益 | 1,300,000百万円 | 1,240,000百万円 | 1,234,510百万円 |
| 事業利益 | 188,000百万円 | 166,500百万円 | 166,512百万円 |
| 営業利益 | 191,500百万円 | 153,000百万円 | 152,956百万円 |
| 当期利益 | 109,000百万円 | 105,500百万円 | 105,455百万円 |
リスクと課題
好調な業績の一方で、同社は複数の外部リスクを注視している。特に以下の点について、経営上の警戒が必要としている。
- 為替変動リスク: 海外売上比率が高いため、円高局面では利益の目減りが発生する可能性がある。
- 原材料価格・物流費: 天然ゴムや石油系原料の価格高騰、および国際的な物流コストの上昇が利益を圧迫する懸念。
- 主要市場の需要動向: 北米自動車メーカーの生産調整や、中国市場における現地メーカーとの競争激化による影響。
- 地政学リスク: 欧州や中東情勢の変化によるサプライチェーンへの影響。
横浜ゴムの第1四半期決算は、数値以上に中身の強さが際立っています。特筆すべきは、米国工場の閉鎖に伴う一時費用 130億円 を計上しながらも、営業利益を前年比で 34.5%増 にまで持っていった収益力の高さです。
これは「YX2026」で掲げる高付加価値商品の比率引き上げが、欧州市場などで着実に実を結んでいる証左と言えるでしょう。また、ライバルのブリヂストンなどが苦戦するケースもある中で、同社がインド市場を早期に開拓し、確固たる地位を築きつつある点は、今後の持続的成長における大きなアドバンテージです。
懸念点としては、今回の増益の一定部分が円安による「かさ上げ」であることは否定できません。しかし、原材料高を価格転嫁や製品ミックスの改善で撥ね退けている点は評価でき、就職活動中の学生にとっても、グローバルな競争力と変革のスピード感を持った企業として非常に魅力的な決算内容となっています。
