髙島屋・2026年2月期Q3、純利益14.0%増の297億円——インバウンド反動を資産売却と金融事業でカバー、CB買入消却も発表
売上高
3,538億円
-2.2%
通期予想
4,914億円
営業利益
373億円
-10.3%
通期予想
525億円
純利益
297億円
+14.0%
通期予想
400億円
営業利益率
10.5%
株式会社髙島屋が6日に発表した2026年2月期第3四半期(2025年3月〜11月)の連結決算は、営業収益が前年同期比 2.2%減 の 3,538億2,100万円、営業利益が同 10.3%減 の 372億6,700万円 となった。前年に円安を背景に急拡大したインバウンド需要の反動が国内百貨店事業に響き、本業は減益を余儀なくされた。一方で、固定資産売却益の計上により純利益は 14.0%増 の 297億2,200万円 と増益を確保したほか、将来の株式希薄化を防ぐための 転換社債(CB)の買入・消却 という踏み込んだ資本政策を打ち出している。
業績のポイント
当第3四半期累計期間の業績は、前年同期の好調すぎるインバウンド需要という「高いハードル」に直面した形となった。主力の百貨店事業において、国内顧客の売上は既存店ベースで前年を上回り堅調を維持したものの、円安メリットをフルに享受した前年同期の免税売上の勢いが鈍化したことが収益を押し下げた。営業利益は 372億6,700万円(前年同期比 10.3%減)と2桁の減益となったが、これは ラグジュアリーブランドの売上比重が高まったことによる商品利益率の低下 や、ベースアップなどの人的資本経営に伴う販管費の増加も要因として挙げられる。
一方で、親会社株主に帰属する四半期純利益は 297億2,200万円 と前年比 14.0%増 を達成した。これは保有する固定資産の売却により 126億600万円 の特別利益を計上したことが大きく寄与しており、本業の足踏みを資産の効率化で補った格好だ。消費環境としては、実質賃金の伸び悩みや地政学リスクといった不透明感が増す中で、百貨店としての集客力と資産背景の強さが示された決算といえる。
| 指標 | 当期実績 | 前年同期 | 増減率 |
|---|---|---|---|
| 営業収益 | 3,538億円 | 3,617億円 | △2.2% |
| 営業利益 | 372億円 | 415億円 | △10.3% |
| 経常利益 | 359億円 | 418億円 | △14.1% |
| 四半期純利益 | 297億円 | 260億円 | +14.0% |
業績推移(通期)
セグメント別動向
セグメント別では、百貨店事業の苦戦を金融業や海外事業の一部が下支えする構図が鮮明となった。国内百貨店業は、営業収益 2,185億7,900万円(前年同期比 5.1%減)、営業利益 162億5,800万円(同 21.4%減)と大幅な減益だった。インバウンド需要の反動に加え、利益率の低い高額品の売上構成が拡大したことが収益性を圧迫した。これに対し、会社側はポイント戦略のリブランディングやアプリのID連携を通じた 顧客接点の強化 で、国内顧客の固定客化を急いでいる。
対照的に成長を牽引したのが金融業だ。営業収益は 152億9,900万円(前年同期比 10.4%増)、営業利益は 42億3,100万円(同 16.7%増)と高い成長を記録した。カード事業における新規会員の獲得や取扱高の増大に加え、2024年6月に導入した「あとから」分割払いサービスの拡充などが収益に寄与した。百貨店をプラットフォームとした金融サービスへの転換が着実に進んでいる。
海外百貨店業は営業利益 56億1,500万円(前年同期比 1.4%増)と微増益を確保した。シンガポール高島屋ではインフレによる消費停滞が見られたものの、徹底したコスト削減が功を奏した。また、ベトナム事業は化粧品や子供用品が好調で、ホーチミンでの増収増益に加えてハノイでの新規開発計画も「ウエストレイクスクエアハノイ」として着実に進捗しており、東南アジア市場を次なる成長の柱 と位置づける戦略が継続されている。
| セグメント | 営業収益 | 前年比 | 営業利益 | 前年比 |
|---|---|---|---|---|
| 国内百貨店 | 2,185億円 | △5.1% | 162億円 | △21.4% |
| 海外百貨店 | 241億円 | △1.2% | 56億円 | +1.4% |
| 国内商業開発 | 311億円 | +2.2% | 52億円 | △3.9% |
| 金融業 | 152億円 | +10.4% | 42億円 | +16.7% |
| 建装業 | 240億円 | +4.3% | 19億円 | +28.4% |
| セグメント | 売上高 | 構成比 | 営業利益 | 営業利益率 |
|---|---|---|---|---|
| 国内百貨店業 | 2,186億円 | 62% | 163億円 | 7.4% |
| 金融業 | 153億円 | 4% | 42億円 | 27.7% |
| 海外百貨店業 | 242億円 | 7% | 56億円 | 23.2% |
財務状況と資本政策
財務面では、2025年11月末時点の総資産は前連結会計年度末から 409億円 増加し、1兆3,369億円 となった。売掛金等の増加が主な要因だ。自己資本比率は 35.7% と、前年度末の 36.5% から微減したが、依然として強固な財務基盤を維持している。
特筆すべきは、同日発表された大胆な資本政策だ。将来的な1株当たり価値の希薄化を懸念し、残存する 2028年満期ユーロ円建転換社債型新株予約権付社債(CB)の全額(額面600億円)の買入・消却 を決定した。これに伴い、これまで進めていた 150億円 を上限とする自己株式の取得についても、取得済みの株式(約1,035万株)をCB転換時の交付用として温存するため、自己株式の消却を見合わせる という柔軟な判断を下している。株主還元と資本効率の向上を両立させる、投資家を意識した経営判断といえる。
リスクと課題
今後の懸念材料として、会社側は以下のリスクを挙げている。
- 地政学リスクと為替: アメリカの関税政策による貿易摩擦や日中関係の悪化が、金融市場や訪日インバウンド需要に与える影響を注視している。
- 国内消費の冷え込み: 実質賃金の伸び悩みによる個人消費の停滞が、主力の国内百貨店事業のさらなる下押し要因となるリスクがある。
- コスト高の継続: ベースアップ等の人件費増加は、人的資本経営として必要不可欠な投資である一方、短期的には販管費を押し上げ、利益率を圧迫する要因となっている。
- 中国市場の減速: 上海高島屋においては、現地の景気低迷による消費減速が続いており、依然として営業赤字が継続している点が課題だ。
通期見通し
2026年2月期の連結業績予想については、2025年10月14日に発表した数値を据え置いた。通期では前期比で微減収、営業利益ベースで 8.7%減 を見込むが、純利益は自社株買いや今回のCB対策による1株当たり利益(EPS)の向上により、前期並みの水準(1.2%増)を確保する見通しだ。
| 項目 | 今回予想(据置) | 前期実績 | 増減率 |
|---|---|---|---|
| 営業収益 | 4,914億円 | 4,985億円 | △1.4% |
| 営業利益 | 525億円 | 575億円 | △8.7% |
| 親会社株主に帰属する純利益 | 400億円 | 395億円 | +1.2% |
| 1株当たり当期純利益 | 133.94円 | 125.64円 | +6.6% |
今回の決算で最も注目すべきは、本業の百貨店事業における「インバウンドの踊り場」を、金融事業の成長と戦略的な資産売却で見事に補填している点です。
特に金融事業(カード事業)は、営業利益率が約27%と非常に高く、百貨店事業(利益率約7.4%)に比べて圧倒的に高収益なセグメントに育っています。単なる小売業から、顧客資産を活用した「金融プラットフォーマー」への変貌が、同社のバリュエーションを下支えしていると言えるでしょう。
また、600億円規模のCB買入・消却という決断は、金利上昇局面において負債コストを抑えつつ、将来の株式希薄化を未然に防ぐ「先手」の資本政策として高く評価できます。自己株消却を見合わせてCB転換用に充当する判断も合理的であり、総じて「攻めと守り」のバランスが取れた決算という印象を受けます。
