NSユナイテッド海運・2026年3月期Q3、純利益24.5%増の181億円——老齢船売却益が寄与、通期予想と配当を上方修正
売上高
1,713億円
-9.6%
通期予想
2,240億円
営業利益
151億円
-10.6%
通期予想
189億円
純利益
182億円
+24.5%
通期予想
208億円
営業利益率
8.8%
NSユナイテッド海運が30日に発表した2026年3月期第3四半期(4〜12月)の連結決算は、純利益が前年同期比 24.5%増 の 181億5,300万円 と大幅な増益となった。為替の円高推移や外航海運市況の停滞により売上高と営業利益は減少したものの、船隊整備に伴う老齢船の売却益計上が利益を大きく押し上げた。足元の堅調な推移を踏まえ、同社は通期の業績予想を上方修正し、年間配当予想も前回から 25円 引き上げ 265円 とすることを決めた。
業績のポイント
当第3四半期累計の売上高は前年同期比 9.6%減 の 1,712億6,400万円、営業利益は 10.6%減 の 150億7,300万円 と、本業ベースでは減収減益となった。これは外航海運事業において、新造船の竣工増加による船腹供給圧力や、為替レートが前年同期の 152.11円 から 148.33円 へと円高に振れたことが主な要因である。
一方で、親会社株主に帰属する四半期純利益は 181億5,300万円(前年同期比 +24.5%)と大きく伸びた。これは、船隊の若返りを目指す戦略的な経営判断に基づき、保有する老齢船を売却したことで、特別利益として 70億3,500万円 の固定資産売却益を計上した(前年同期は 6億4,000万円)ためだ。コスト面では、燃料油価格が1トンあたり 493ドル と前年同期(574ドル)から 14.1% 下落したことが利益の下支えとなった。
| 項目 | 2025年3月期 Q3 | 2026年3月期 Q3 | 前年同期比 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 1,893億円 | 1,712億円 | △9.6% |
| 営業利益 | 168億円 | 150億円 | △10.6% |
| 経常利益 | 169億円 | 146億円 | △13.4% |
| 四半期純利益 | 145億円 | 181億円 | +24.5% |
業績推移(通期)
セグメント別動向
主力の外航海運事業は、売上高 1,468億8,800万円(前年同期比 11.6%減)、セグメント利益 114億8,400万円(同 19.0%減)となった。鉄鉱石を運ぶケープ型撒積船は、ギニアのシマンドゥ鉱山からの出荷拡大期待などで底堅く推移したが、中小型のパナマックス型などは新造船の供給過剰感が意識され、市況は上値の重い展開が続いた。
内航海運事業は、売上高 243億7,600万円(前年同期比 4.6%増)、セグメント利益 36億900万円(同 33.5%増)と増収増益を達成した。建設・製造業向けの鋼材輸送が一部で回復したほか、電力需要の増加を背景に電力関連貨物の輸送量が増加。一部のセメント関連貨物やLPG輸送で低迷が見られたものの、効率運航の徹底が実を結び、利益率が向上した。
| セグメント | 売上高 | 前年同期比 | セグメント利益 | 前年同期比 |
|---|---|---|---|---|
| 外航海運事業 | 1,468億円 | △11.6% | 114億円 | △19.0% |
| 内航海運事業 | 243億円 | +4.6% | 36億円 | +33.5% |
| その他 | 3億円 | +16.3% | △2,700万円 | — |
| セグメント | 売上高 | 構成比 | 営業利益 | 営業利益率 |
|---|---|---|---|---|
| 外航海運事業 | 1,469億円 | 86% | 115億円 | 7.8% |
| 内航海運事業 | 244億円 | 14% | 36億円 | 14.8% |
財務状況と資本政策
2025年12月末時点の総資産は、前連結会計年度末から 81億4,900万円 増え 2,960億9,800万円 となった。現金及び預金が 161億円 増加した一方で、売船により船舶(固定資産)が 79億円 減少している。負債面では長期借入金の返済が進み、自己資本比率は前年度末の 56.5% から 60.6% へと上昇し、財務体質の健全化が一段と進んだ。
株主還元については、連結配当性向 30% を基準とする方針を維持している。今回、純利益の積み増しを背景に、期末配当予想を前回の 140円 から 160円 へと上方修正した。これにより、中間配当(105円)と合わせた年間配当金は 265円 となり、前期実績(240円)から 25円 の増配となる見込みだ。
通期見通し
同社は2026年3月期の通期業績予想を上方修正した。第4四半期の前提条件について、為替レートを1ドル= 155.00円(前回 145.00円)に見直したほか、燃料油価格の想定も引き下げた。ドライバルク市況は中国の旧正月による停滞など季節的な調整局面にあるが、ギニアの鉄鉱石輸送需要が中長期的な下支えになるとみている。
| 項目 | 前回予想 | 今回修正 | 前期実績 | 修正率 |
|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 2,120億円 | 2,240億円 | 2,475億円 | +5.7% |
| 営業利益 | 185億円 | 189億円 | 215億円 | +2.2% |
| 経常利益 | 165億円 | 171億円 | 224億円 | +3.6% |
| 当期純利益 | 189億円 | 208億円 | 200億円 | +10.1% |
リスクと課題
今後の懸念材料として、中国経済の減速に伴う荷動きの一服や、南米の雨季による鉄鉱石・穀物の出荷停滞といった季節的要因が挙げられる。また、新造船の竣工に伴う船腹供給の増加はパナマックス型以下の市況において引き続き重石となるリスクがある。さらに、紅海情勢などの地政学リスクが海上輸送ルートや運賃に与える影響についても、継続的な注視が必要であると会社側は言及している。
今回の決算で特筆すべきは、本業の営業利益が減少する中で、老齢船の売却という「資産の入れ替え」を好機と捉え、最終利益を大幅に積み増した経営判断です。
- 海運市況のボラティリティに対し、保有資産の最適化で利益を確保する戦略が奏功しています。
- 財務基盤(自己資本比率60.6%)は極めて堅固であり、業界内でも高い水準にあります。
- 配当性向30%を厳守しつつ、利益の増加分を確実に株主へ還元(25円増配)する姿勢は、投資家から高く評価されるポイントでしょう。
今後は、ギニアのシマンドゥ鉱山プロジェクトなどの新規案件が、中長期的な収益の柱としてどれだけ貢献できるかが焦点となります。
