株式会社名村造船所 の会社詳細
株式会社名村造船所
名村造船所
2026年3月期 第3四半期

名村造船所・2026年3月期Q3、純利益31.8%減の153億円——大型船への移行期で操業低下も、受注残は4,400億円へ拡大

名村造船所
7014
減収減益
新造船
GX投資
受注残高
撒積船
下方修正
造船業界
脱炭素
第3四半期累計期初から9ヶ月間の累計値(前年同期比)

売上高

1,153億円

-4.5%

通期予想

1,600億円

進捗率72%

営業利益

195億円

-18.2%

通期予想

260億円

進捗率75%

純利益

154億円

-31.8%

通期予想

180億円

進捗率85%

営業利益率

16.9%

株式会社名村造船所が発表した2026年3月期第3四半期(2025年4月〜12月)の連結決算は、売上高が前年同期比 4.5%減1,153億300万円 、親会社株主に帰属する四半期純利益が同 31.8%減153億5,900万円大幅な減益となりました。主力とする新造船事業において、ハンディ型撒積船から大型撒積船へのプロダクトミックスの切り替え時期に当たったことで一時的に操業量が低下したほか、インフレによるコスト増が利益を圧迫しました。一方で、環境規制に対応した戦略的な受注活動により、受注残高は前年同期を上回る水準を維持しており、次世代船への投資を加速させています。

業績のポイント

当第3四半期の業績は、前年同期の記録的な好決算からの反動もあり、減収減益での着地となりました。売上高は 1,153億300万円 (前年同期比 4.5%減 )、営業利益は 194億8,000万円 (同 18.2%減 )を計上しました。利益率の低下は、中核の新造船事業において、従来の主力であったハンディ型撒積船から、LNG二元燃料船を含む大型撒積船へと建造ラインをシフトする「移行期」に差し掛かり、一時的に工場の稼働効率が低下したことが主な要因です。

また、世界的なインフレに伴う資材価格の高騰や労務費の上昇も下押し圧力となりました。しかし、四半期単体での推移を見ると、プロダクトミックスの改善と円安基調の継続が奏功し、第2四半期累計期間と比較して営業利益の改善傾向が見られます。最終的な四半期純利益が 153億5,900万円 (同 31.8%減 )と大きく減少したのは、前年同期に計上された一時的な利益の剥落に加え、税金費用の増加が影響しています。

指標2025年3月期 Q32026年3月期 Q3前年同期比
売上高1,207億円1,153億円△4.5%
営業利益238億円194億円△18.2%
経常利益249億円216億円△13.3%
四半期純利益225億円153億円△31.8%

業績推移(通期)

売上高営業利益|当期累計通期予想残

セグメント別動向

主力の新造船事業は、売上高 911億2,300万円 (前年同期比 3.7%減 )、セグメント利益 196億100万円 (同 11.7%減 )となりました。前期まで業績を牽引したハンディ型撒積船の連続建造から、より大型で環境負荷の低い船舶へのシフトを進めています。この過渡期において一時的な操業低下が見られたものの、環境規制に適応した戦略的受注が奏功し、セグメントの受注残高は4,400億9,100万円(同 15.1%増 )と極めて高い水準を確保しました。これは将来の売上基盤を強固にする重要な成果といえます。

修繕船事業は、売上高 149億3,600万円 (同 12.6%減 )、セグメント利益 12億9,600万円 (同 54.8%減 )と苦戦を強いられました。主力の国内艦艇における工事量が減少したことで操業度が低下したほか、民間船の大型修繕工事においても技術的難易度の高い案件が含まれたことが利益を押し下げました。一方で、鉄構・機械事業は売上高 43億6,200万円 (同 2.9%増 )、セグメント利益 2億6,500万円 (同 146.6%増 )と大幅な増益を達成しました。舶用エンジン用クランクシャフトの需要回復と原価削減が進んだことが、部門業績の底上げに寄与しました。

セグメント売上高前年比営業利益前年比
新造船911億円△3.7%196億円△11.7%
修繕船149億円△12.6%12億円△54.8%
鉄構・機械43億円+2.9%2.6億円+146.6%
その他48億円+2.7%6.8億円+35.9%
セグメント売上高構成比営業利益営業利益率
新造船911億円79%196億円21.5%
修繕船149億円13%13億円8.7%
鉄構・機械44億円4%3億円6.1%

財務状況と資本政策

当第3四半期末の総資産は、前期末比 419億9,600万円増加 し、 2,510億3,300万円 となりました。これは新造船の受注増加に伴い、前受け金を含む契約負債が増加したことや、保有する投資有価証券の時価が上昇したことによるものです。負債合計も 1,249億8,800万円 (前期末比 210億9,300万円増 )に拡大しましたが、有利子負債は 156億6,400万円 と逆に減少しており、実質的な財務体質は改善しています。

自己資本比率は 49.9% (前期末比 0.1ポイント低下 )と、資産規模の拡大に伴い微減したものの、依然として業界内で健全な水準を維持しています。配当については、中間配当 20円 を実施済みで、期末配当予想は 20円 (年間計 40円 )を据え置いています。前期の年間 50円 からは減配となりますが、将来の成長投資に向けた資金確保とのバランスを考慮した経営判断といえます。特に、脱炭素社会に向けた「GX(グリーントランスフォーメーション)」関連投資として、2029年度までにグループ全体で総額約290億円の設備投資を行う計画を公表しており、中長期的な企業価値向上を優先する姿勢を鮮明にしています。

通期見通し

2026年3月期の通期連結業績予想について、同社は今回、利益予想を下方修正しました。売上高は概ね計画通り推移しているものの、プロダクトミックスの変更に伴う一時的なコスト増や、修繕船事業における操業低下の影響を織り込みました。通期の純利益は 180億円 (前期比 31.4%減 )を見込んでいます。ただし、期末に向けた為替レートの前提や、手持ち工事の進捗によっては、保守的な見積もりとなっている可能性もあります。

項目前回予想今回修正前期実績
売上高1,600億円1,600億円1,591億円
営業利益290億円260億円294億円
経常利益290億円260億円295億円
当期純利益200億円180億円262億円

リスクと課題

同社が直面している主なリスクと課題は以下の通りです。

  • 為替変動リスク: 受注の多くが外貨建てであるため、円高進行は円換算での売上高・利益を直接的に減少させる要因となります。足元では150円台の推移ですが、急激な変動には注視が必要です。
  • 資材・労務コストの不透明感: 鋼材価格の高止まりや、造船業界全体での深刻な人手不足に伴う労務費の上昇が、継続的に利益を圧迫するリスクがあります。
  • 技術革新への対応: IMO(国際海事機関)のGHG削減戦略に基づき、ゼロエミッション船の開発競争が激化しています。巨額のGX投資をいかに効率よく収益化に結びつけるかが、長期的な競争力を左右します。
  • 地政学リスク: 紅海周辺の情勢不安定化など、海運市況の混乱が新造船需要や修繕船の入渠計画に影響を与える可能性があります。
AIアナリストの視点

名村造船所の今回の決算は、一見すると大幅減益というネガティブな数字が並びますが、中身を精査すると「戦略的な踊り場」であるという側面が強いです。特に注目すべきは、新造船事業の受注残高が4,400億円を超え、前年同期比で15%以上伸びている点です。これは数年分の仕事量を既に確保していることを意味します。

造船業界は今、単に船を作る時代から「いかに環境負荷を下げられるか」という技術競争のフェーズに移っています。名村造船所が290億円規模のGX投資を決断したのは、現在の利益を削ってでも次世代の覇権を握るという経営陣の強い意志の表れでしょう。

投資家や就活生の視点では、足元の利益変動に一喜一憂するよりも、この「高付加価値船への転換」が工場の稼働効率をどこまで再浮上させられるか、そして豊富な受注残が円安局面でどれだけ利益として顕在化してくるかを注視すべき決算と言えます。伝統的な「重厚長大」から「グリーン・テック」への脱皮を図る過渡期にある一社です。