村田製作所・2026年3月期Q3、売上高2.9%増の1兆3,702億円——AIサーバー需要で増収も、フィルタ事業の減損で利益は減少
売上高
1.4兆円
+2.9%
通期予想
1.8兆円
営業利益
2,030億円
-13.3%
通期予想
2,700億円
純利益
1,573億円
-21.8%
通期予想
2,200億円
営業利益率
14.8%
売上高はAIサーバー向けコンデンサの需要拡大により、前年同期比 2.9%増 の 1兆3,702億円 を達成しました。しかし、通信向けフィルタ事業で 約438億円の減損損失 を出したため、純利益は前年比 21.8%減 と苦戦しています。
業績のポイント
売上高は前年同期を上回る 1兆3,702億円 (前年比 2.9%増 )でした。
AIサーバーや自動車向けの電子部品が、全体の成長をけん引しました。
営業利益は 203,012百万円 (前年比 13.3%減 )と落ち込みました。
原因は、スマートフォン向け部品の価格下落と 巨額の減損損失 です。
生産コストの削減は進みましたが、事業の収益低下を補えませんでした。
業績推移(通期)
セグメント別動向
- コンデンサ: 売上高 6,940億円 (前年比 10.1%増 )。AIサーバー向けの需要が好調で、大幅な増収となりました。
- インダクタ・EMIフィルタ: 売上高 1,671億円 (前年比 9.6%増 )。自動車やサーバー向けに部品搭載数が増え、順調に伸びました。
- 高周波・通信: 売上高 3,049億円 (前年比 12.0%減 )。スマートフォンやPC市場の低迷により、主要基板の販売が減りました。
- エナジー・パワー: 売上高 1,138億円 (前年比 3.8%減 )。サーバー用は伸びましたが、ゲーム機用の電池が落ち込みました。
- 機能デバイス: 売上高 792億円 (前年比 7.5%増 )。自動車向けのセンサが堅調に推移し、増収を確保しました。
| セグメント | 売上高 | 構成比 | 営業利益 | 営業利益率 |
|---|---|---|---|---|
| コンポーネント(コンデンサ・インダクタ等) | 8,611億円 | 63% | 2,340億円 | 27.2% |
| デバイス・モジュール(高周波・電池等) | 4,980億円 | 36% | -26,113百万円 | — |
財務状況と資本政策
総資産は 3兆915億円 となり、前期末から 633億円 増えました。
設備投資を継続しており、有形固定資産が大きく増加しています。
株主還元では、年間配当を前期の57円から 60円へと増配 する方針です。
また、当期中に 1,000億円 の 自社株買い を実施し、資本効率を高めています。
自己資本比率は 84.6% と、極めて高い財務の健全性を維持しています。
通期見通し
通期の売上高予想を 1兆8,000億円 (前回比 600億円上方修正 )に引き上げました。
AI市場の拡大と、想定以上の円安進行(1ドル150円へ変更)が主な理由です。
一方で、営業利益は 270,000百万円 (前回比 100億円下方修正 )に下げました。
通信向けフィルタ事業での のれんの減損損失 を織り込んだためです。
税引前利益は、為替差益の発生を見込み、前回予想を上回る見通しです。
リスクと課題
- 製品価格の下落: スマートフォン向けなどの汎用品で、厳しい価格競争が続いています。
- 事業構造の改革: 収益性が悪化したフィルタ事業の立て直しが、今後の大きな課題です。
- 地政学リスク: 主要国による通産政策の変化が、電子部品の供給網に影響する恐れがあります。
今回の決算は、AIサーバーという「新たな成長エンジン」と、スマートフォン向けフィルタという「過去の負債」が対照的に現れた内容です。
売上高の上方修正からは、AI関連需要の力強さが感じられます。特にコンデンサの伸長は他社を圧倒する強みです。
注目すべきは、第3四半期に 約438億円の減損 を一括計上した経営判断です。不振事業の負の遺産を早期に処理し、次期以降の利益体質を改善させる狙いが見えます。
短期的な利益減少は避けられませんが、増配と自社株買いを継続しており、株主視点を重視する姿勢は評価できるでしょう。今後は、価格競争が激しいモバイル向けへの依存を減らし、いかに車載やデータセンター向けで利益率を高められるかが焦点となります。
