近鉄グループHD・2026年3月期Q3、営業利益6.5%増の723億円——万博需要や不動産が牽引、物流の苦戦をカバー
売上高
1.3兆円
+0.8%
通期予想
1.8兆円
営業利益
723億円
+6.5%
通期予想
880億円
純利益
404億円
-3.4%
通期予想
480億円
営業利益率
5.5%
近鉄グループホールディングスが発表した2026年3月期第3四半期累計決算は、営業収益が前年同期比 0.8%増 の 1兆3,138億円、営業利益が 6.5%増 の 723億円 となりました。「大阪・関西万博」による旅客・消費需要の拡大が運輸や流通、ホテル事業に追い風となったほか、不動産販売の好調が利益を押し上げました。一方で、国際物流事業における価格競争の激化や、百貨店店舗の閉店に伴う特別損失の計上により、純利益は 3.4%減 の 404億円 となっています。
業績のポイント
当第3四半期の連結業績は、インバウンド需要の回復と「大阪・関西万博」に関連する需要の顕在化により、本業の儲けを示す営業利益が堅調に推移しました。営業収益は 1兆3,138億円(前年同期比 +0.8%)、営業利益は 723億円(同 +6.5%)を確保しています。国内経済が緩やかな回復基調にある中、個人消費の改善や訪日客の増加が運輸業やホテル・レジャー業の収益を支えました。
一方で、親会社株主に帰属する四半期純利益は 404億円(前年同期比 -3.4%)と、前年を下回る結果となりました。これは、近鉄百貨店名古屋店の閉店に関連して特別損失(店舗閉鎖損失等)を計上したことや、金利上昇に伴う支払利息の増加( 105億円、前年比+24%)が影響しています。ただし、名古屋店閉店については受取補償金を特別利益に計上するなど、構造改革に伴う一過性の要因が大きく、本業の収益力は依然として力強さを維持しています。
| 項目 | 2025年3月期 Q3 | 2026年3月期 Q3 | 前年同期比 |
|---|---|---|---|
| 営業収益 | 1兆3,034億円 | 1兆3,138億円 | +0.8% |
| 営業利益 | 679億円 | 723億円 | +6.5% |
| 経常利益 | 669億円 | 687億円 | +2.7% |
| 四半期純利益 | 418億円 | 404億円 | -3.4% |
業績推移(通期)
セグメント別動向
主軸の「運輸」セグメントは、営業利益が 305億円(前年同期比 +9.9%)と大きく伸長しました。これは、大阪・関西万博の開催に伴う旅客の増加に加え、2024年2月に実施したダイヤ変更による名阪特急の増発効果が寄与したためです。また、インバウンド需要も堅調に推移し、特急利用客の増加が収益性を高めました。
「不動産」セグメントは、営業利益 119億円(前年同期比 +24.7%)と顕著な伸びを見せました。首都圏や近畿圏において、高価格帯の分譲マンション販売が順調に進捗したほか、新築賃貸マンションの一棟売却を戦略的に実施したことが利益を押し上げました。建設コストの上昇が懸念される中でも、高付加価値物件への需要を的確に捉えています。
「国際物流」セグメントは、営業利益 78億円(前年同期比 -19.6%)と苦戦しました。航空・海上の取扱物量自体は増加傾向にあるものの、世界的な市場競争の激化に伴い販売単価(運賃)が低下したことが響きました。グループ全体の売上高の約4割を占める巨大セグメントだけに、市況感の悪化が全体の売上成長を鈍化させる要因となりました。
「流通」セグメントは、営業利益 59億円(前年同期比 +34.9%)と大幅な増益を達成しました。百貨店での免税売上の反動減があったものの、大阪・関西万博のオフィシャルストアが好調に推移したほか、駅ナカ店舗の売上が人流増加に伴い拡大しました。「ホテル・レジャー」セグメントも、宿泊部門の堅調な推移と海外旅行取扱いの増加により、営業利益 143億円(同 +3.6%)を確保しています。
| セグメント | 売上高 | 構成比 | 営業利益 | 営業利益率 |
|---|---|---|---|---|
| 運輸 | 1,729億円 | 13% | 305億円 | 17.7% |
| 不動産 | 1,245億円 | 10% | 119億円 | 9.6% |
| 国際物流 | 5,600億円 | 43% | 79億円 | 1.4% |
| 流通 | 1,696億円 | 13% | 60億円 | 3.5% |
| ホテル・レジャー | 2,892億円 | 22% | 144億円 | 5.0% |
財務状況と資本政策
2025年12月末時点の総資産は、前期末比733億円増の 2兆5,806億円 となりました。これは、マンション販売用不動産などの棚卸資産や、将来の成長に向けた設備投資に伴う有形固定資産が増加したことによるものです。一方で、負債合計は 1兆9,185億円 となり、社債の償還を進める一方で、機動的な資金調達のために借入金を増やしています。
株主還元については、年間配当予想を前期実績の50円から60円へと増配する方針を維持しています。当第2四半期末には30円の配当を実施済みで、期末も30円を予定しています。利益の積み上げにより、自己資本比率は前期末の21.7%から 22.7% へと1ポイント改善しており、中長期的な財務健全性の向上と株主還元の強化を両立させる経営姿勢を示しています。
通期見通し
2026年3月期の通期業績予想については、2025年11月公表の数値を据え置いています。万博需要の継続や不動産販売の進捗を見込む一方、国際物流の不安定な市況を慎重に見極める方針です。通期の営業利益は前期比4.3%増の 880億円、純利益は2.7%増の 480億円 を見込んでいます。
| 項目 | 前回予想 | 今回予想(据置) | 前期実績 (2025/3) |
|---|---|---|---|
| 営業収益 | 1兆7,500億円 | 1兆7,500億円 | 1兆7,411億円 |
| 営業利益 | 880億円 | 880億円 | 843億円 |
| 親会社株主純利益 | 480億円 | 480億円 | 467億円 |
| 1株当たり利益 | 252.40円 | 252.40円 | 245.81円 |
リスクと課題
今後の懸念材料として、会社側は以下のリスクを挙げています。第一に、米国における関税措置をはじめとした通商政策の不確実性です。これは国際物流セグメントの物量や運賃に直接的な影響を及ぼす可能性があります。第二に、物価高騰と金利上昇の影響です。特に金利上昇は、多額の有利子負債を抱える鉄道・不動産事業において支払利息の増加を招き、経常利益を圧迫する要因となります。
また、中国をはじめとする訪日客の動向変化も、インバウンド依存度が高まっている鉄道やホテル事業におけるリスク要因として注視する必要があります。万博閉幕後の「需要の剥落」をいかに食い止め、リピーターを獲得できるかが、次年度以降の持続的成長の鍵となるでしょう。
今回の決算で特筆すべきは、「万博需要の直接的な恩恵」が既に数字に表れている点です。特に流通セグメントの34.9%増益や、運輸セグメントの9.9%増益は、万博関連のイベントや人流増加を確実に収益化できている証左といえます。
一方で、グループのポートフォリオにおける「弱点」も見えました。
- 国際物流のボラティリティ: 近鉄エクスプレスを連結化したことで収益規模は拡大しましたが、海運・空運市況の悪化がグループ全体の成長を抑制するリスクになっています。
- 金利上昇への耐性: 支払利息の増加が経常利益を押し下げており、金利上昇局面においては、いかに不動産や運輸の利益率を高め、有利子負債のコントロールを徹底できるかが重要になります。
就活生や投資家にとっては、「万博後の成長シナリオ」があるかどうかが次の焦点です。足元の増配は経営の自信の表れですが、不動産の一棟売却のような一過性の利益に頼らず、鉄道やホテルの単価アップを継続できるかが、真の企業価値向上のポイントになるでしょう。
