カゴメ株式会社 の会社詳細
カゴメ株式会社
カゴメ
2025年12月期 通期

カゴメ・2025年12月期通期、営業利益37.5%減の226億円——海外トマト市況の下落と前期の反動が響く、次期は大幅増配へ

カゴメ
2811
決算短信
減益
増配
累進配当
トマトジュース
M&A
自社株買い
株主還元
通期1年間の確定値(前年比)

売上高

2,943億円

-4.1%

通期予想

3,100億円

進捗率95%

営業利益

226億円

-37.5%

通期予想

230億円

進捗率98%

純利益

148億円

-40.8%

通期予想

134億円

進捗率110%

営業利益率

7.7%

カゴメが2日発表した2025年12月期の連結決算は、売上収益が前期比 4.1%減2,942億6,400万円 、営業利益が同 37.5%減226億3,800万円 となった。国内のトマトジュース販売は好調を維持したものの、国際事業におけるトマトペーストの市況下落や、前期に計上した企業買収に伴う一過性の利益が剥落したことが大幅な減益につながった。一方で、次期の年間配当は10円増の 58円 とすることを公表し、株主還元の強化を鮮明に打ち出している。

業績のポイント

当連結会計年度の業績は、売上収益が 2,942億6,400万円 (前期比 4.1%減 )、営業利益は 226億3,800万円 (同 37.5%減 )と、増収増益だった前期から一転して厳しい結果となった。親会社の所有者に帰属する当期利益も 148億円 (同 40.8%減 )と大きく落ち込んでいる。この大幅な減益の背景には、外部環境の変化と会計上の特殊要因という2つの側面がある。

まず、前期(2024年12月期)には米国のインゴマー社を連結子会社化した際、段階取得に係る差益として 93億2,300万円 を「その他の収益」に計上していた。今期はこの一過性の利益がなくなったことが、営業利益ベースでの大きな減少要因となっている。また、主力の国際事業において、世界的な需給緩和を背景にトマトペーストの市況が下降に転じ、販売価格を引き下げざるを得なかったことも収益を押し下げた。国内事業では原材料費の上昇が続いたが、健康需要を捉えた高付加価値商品の販売により、一定の収益性を確保している。

業績推移(通期)

売上高営業利益

セグメント別動向

セグメント別の状況を見ると、国内と海外で明暗が分かれる格好となった。国内加工食品事業は、売上収益が 1,573億2,400万円 (前期比 1.0%増 )、事業利益が 155億700万円 (同 0.4%減 )と底堅く推移した。特に飲料カテゴリーでは、血圧対策などを訴求した「トマトジュース」が引き続き好調で、発売30周年を迎えた「野菜生活100」シリーズも新規ユーザーの獲得に成功している。原材料費の上昇という逆風に対し、ブランド力の強化と販促の効率化で対抗した形だ。

対照的に、国際事業は売上収益が 1,298億3,700万円 (前期比 13.0%減 )、事業利益が 92億8,300万円 (同 33.4%減 )と振るわなかった。トマトペーストの国際市況が下降したことで、米国や欧州での販売価格を引き下げたほか、製造工程での不具合も影響した。海外市場は同社の成長エンジンと位置付けられているが、商品市況の変動リスクが顕在化した形と言える。

セグメント売上収益前期比事業利益前期比
国内加工食品1,573億円+1.0%155億円△0.4%
国際事業1,298億円△13.0%92億円△33.4%
その他223億円+2.3%4.5億円△24.9%
セグメント売上高構成比営業利益営業利益率
国内加工食品事業1,573億円54%155億円9.9%
国際事業1,298億円44%93億円7.2%

財務状況と資本政策

期末の総資産は前期末比 134億400万円 増の 3,758億2,000万円 となった。設備投資の進捗に伴う有形固定資産の増加や、手元流動性の確保を目的とした借入金の積み増しが主な要因だ。親会社所有者帰属持分比率は 50.7% (前期末は51.3%)と、依然として高い財務の健全性を維持している。

特筆すべきは、積極的な株主還元の姿勢である。当期は総額 81億8,400万円自社株買いを実施した。さらに配当については、当期こそ記念配当の剥落により年間 48円 (前期は57円)としたものの、次期(2026年12月期)からは「累進配当」を導入する方針を発表した。総還元性向の目標を従来の40%から 50% に引き上げ、減配を行わない安定的な現金配当を継続する考えだ。

戦略トピック:英国Silbury社の買収

将来の成長に向けた布石として、2026年1月5日付で英国の食品ディストリビューターである Silbury Marketing Ltd の全株式を取得し、連結子会社化した。取得価額は約 50億円 (2,507万ポンド)を見込む。この買収により、欧州市場におけるマーケティングから生産、販売までを一体化させた体制を構築する。

Silbury社は長年、カゴメの関連会社であるポルトガルのHIT社からトマト加工品を仕入れて英国で独占販売してきた実績がある。今回の完全子会社化により、消費地に近い英国でのニーズを的確に捉え、高付加価値な製品ラインナップを拡充することで、市況変動に左右されにくいソリューション型ビジネスへの転換を加速させる狙いがある。

リスクと課題

今後の経営において注視すべきリスクは以下の通りである。

  • 原材料価格の高騰: 農産物やエネルギー価格の高値が続いており、コスト増を価格転嫁や原価低減でどこまで吸収できるかが焦点となる。
  • 国際的なトマト市況の変動: トマトペーストなどの一次加工品は国際相場の影響を受けやすく、需給バランスの変化が直接的に収益を左右する。
  • 為替変動リスク: 海外展開の拡大に伴い、円高・円安による連結業績への影響度が高まっている。
  • 異常気象による調達リスク: 気候変動に伴うトマトの収穫量減少や品質低下は、原材料の安定調達における構造的な課題となっている。

通期見通し

2026年12月期の通期予想については、売上収益が前期比 5.3%増3,100億円 を見込む。国内では2026年2月より飲料製品の価格改定を実施し、コスト増を補う。一方で、親会社株主に帰属する当期利益は 134億円 (同 9.5%減 )と減益を予想している。これは新会計基準(IFRS第18号)の早期適用による影響や、持続的な成長に向けた広告宣伝・研究開発への投資を強化するためである。

項目2025年12月期実績2026年12月期予想増減率
売上収益2,942億円3,100億円+5.3%
営業利益226億円230億円-
当期利益148億円134億円△9.5%

※2026年度より事業利益・営業利益の定義が変更されるため、前期比増減率は未記載。

AIアナリストの視点

カゴメの決算は、一見すると大幅な営業減益ですが、その多くは前期のインゴマー社買収に伴う「負ののれん」的な一過性利益の剥落によるもので、実態としての「稼ぐ力」である事業利益ベースでは 16.2%減 に留まっています。

注目すべきは、業績が踊り場にある中で発表された強気の資本政策です。「累進配当の導入」と「総還元性向50%への引き上げ」は、投資家に対して非常にポジティブなメッセージとなります。これは、国内のトマトジュース市場での圧倒的なブランド力による安定キャッシュフローへの自信の表れと言えるでしょう。

今後の焦点は、買収した英Silbury社を通じて欧州での「脱・コモディティ(市況依存)」をどこまで進められるかです。原材料価格や市況のボラティリティをいかに制御し、安定的な高成長軌道に戻せるかが、就活生や投資家が次期以降に見極めるべきポイントとなります。