株式会社アダストリア の会社詳細
株式会社アダストリア
アンドエスティHD
2026年2月期 第3四半期

アンドエスティHD・2026年2月期Q3、売上高3.3%増の2,273億円で過去最高——米国撤退と国内コスト増で営業益は5.9%減

アンドエスティHD
アダストリア
決算発表
増収減益
米国撤退
東南アジア進出
andST
持株会社移行
アパレル業界
M&A
第3四半期累計期初から9ヶ月間の累計値(前年同期比)

売上高

2,274億円

+3.3%

通期予想

3,050億円

進捗率75%

営業利益

139億円

-5.9%

通期予想

190億円

進捗率73%

純利益

96億円

-3.5%

通期予想

124億円

進捗率77%

営業利益率

6.1%

衣料品大手のアンドエスティHD(旧アダストリア)が発表した2026年2月期第3四半期決算は、売上高が前年同期比3.3%増2,273億7,200万円と過去最高を更新しました。国内でのカジュアル需要の底堅さや、M&Aによる新規ブランドの寄与が収益を押し上げました。一方で、営業利益は円安に伴う原材料高や人件費の増加が響き、同5.9%減138億9,300万円となりました。同社は米国事業からの撤退を決め構造改革を急ぐ一方、成長著しい東南アジアへの投資を加速させる方針です。

業績のポイント

当第3四半期の連結累計期間は、増収減益の着地となりました。売上高は2,273億7,200万円(前年同期比+3.3%)と伸長しましたが、本業の儲けを示す営業利益は138億9,300万円(同△5.9%)に留まりました。純利益についても、米国子会社の持分譲渡に伴う特別損失の計上などにより、95億5,700万円(同△3.5%)となりました。

増収の主な要因は、国内におけるカジュアルファッション需要の底堅い推移に加え、2024年7月に買収した「トゥデイズスペシャル」や「ジョージズ」といった雑貨ブランドの連結貢献です。一方で利益面では、円安による仕入原価の上昇を「適時・適価・適量」の在庫コントロールで抑制したものの、従業員の処遇改善に伴う人件費増や、プロモーションの強化による広告宣伝費の増加が利益を圧迫しました。営業利益率は前年同期から0.6ポイント低下し、6.1%となっています。

項目2025年2月期 Q32026年2月期 Q3前年同期比
売上高2,200億円2,273億円+3.3%
営業利益147億円138億円△5.9%
経常利益149億円139億円△7.0%
四半期純利益99億円95億円△3.5%

業績推移(通期)

売上高営業利益|当期累計通期予想残

セグメント別動向

主力のアパレル・雑貨関連事業は、売上高2,158億4,900万円(前年同期比+3.5%)、セグメント利益139億4,000万円(同△9.4%)となりました。国内では4月や9月の記録的な猛暑により季節衣料の動き出しが遅れる場面もありましたが、「グローバルワーク」や「レプシィム」などの主力ブランドが堅調に推移しました。自社ECプラットフォーム「and ST」の会員数は、前期末から150万人増加し2,120万人に達しており、店舗とECを融合させたOMO戦略が顧客基盤の拡大に寄与しています。

海外事業では、地域ごとに明暗が分かれました。グレーターチャイナ(中国大陸・香港・台湾)では不動産不況の影響を受けつつも、台湾が同25.1%増、香港が同1.3%増と伸長しました。一方、米国事業については、不採算ブランドであった「Velvet, LLC」の全持分を2025年7月に譲渡し、米国市場からの完全撤退を決定しました。これにより、今後は成長の見込めるアジア圏へのリソース集中を鮮明にしています。

飲食事業(その他)は、売上高116億3,100万円(同+0.6%)となり、セグメント損失は2,800万円と、前年同期の4億1,500万円の赤字から大幅に赤字幅が縮小しました。原材料費や光熱費の高騰、人手不足といった厳しい環境が続いていますが、不採算店舗の整理と既存店の改善が進み、損益分岐点付近まで回復しています。

セグメント売上高構成比営業利益営業利益率
アパレル・雑貨関連事業2,158億円95%139億円6.5%
その他(飲食等)116億円5%-28百万円

戦略トピック:持株会社移行とグローバル再編

同社は2025年9月1日付で持株会社体制へ移行し、社名を「株式会社アンドエスティHD」へ変更しました。これは、グループ内の各事業会社が自律的に意思決定を行い、柔軟なM&Aや新規事業開発を推進できる体制を整えるための経営判断です。この体制移行により、プラットフォーム事業である「and ST」を核とした「マルチカンパニー経営」の加速を目指します。

また、グローバル戦略の再構築として、東南アジアへの投資を一段と強めています。タイやフィリピンに続き、2026年1月にはマレーシアに新会社を設立する予定です。所得水準が高く安定した成長が見込まれるマレーシアに、主力ブランド「niko and ...」を皮切りに出店を開始します。不採算の米国から撤退する一方で、成長余力の大きいASEAN地域へ経営資源をシフトさせる動きは、今後の収益改善に向けた重要なターニングポイントと言えます。

財務状況と資本政策

2026年2月期第3四半期末の総資産は、前期末比238億円増の1,570億600万円となりました。主に新規ブランドの連結や季節商品の仕入れに伴う棚卸資産の増加(57億円増)などが要因です。自己資本比率は52.1%と、前期末の57.9%から低下したものの、依然として健全な水準を維持しています。負債面では、短期借入金が90億円増加していますが、これは運転資金の確保および成長投資に向けた機動的な資金調達の一環です。

株主還元については、配当予想を据え置いています。年間配当金は1株当たり90円(中間45円、期末45円予想)を予定しており、前年実績と同額です。また、後発事象として福岡物流センターの売却を発表しました。2025年12月に引渡しが完了しており、通期決算において約34億円の譲渡益を特別利益に計上する見込みです。この売却資金は、物流拠点の再編や設備投資の効率化に充当される計画です。

通期見通し

2026年2月期の通期連結業績予想については、前回発表の数値を据え置いています。第3四半期までの営業利益進捗率は73.1%となっており、例年、冬物需要が高まる第4四半期の構成比が高い同社にとって、概ね計画に沿った進捗と言えます。今後は物流センター売却益の計上(約34億円)が純利益を下支えする一方、不透明な為替動向や人件費高騰の影響を注視する必要があります。

項目前回予想当期実績(Q3累計)進捗率
売上高3,050億円2,273億円74.5%
営業利益190億円138億円73.1%
当期純利益124億円95億円77.1%

リスクと課題

同社が注視すべき主なリスクは以下の通りです。

  • 円安・コスト高: 輸入仕入が多いため、為替の円安進行は原価率の悪化に直結します。価格改定と価値訴求のバランスが問われています。
  • 消費マインドの減退: 物価上昇が続く中、実質賃金の伸びが追いつかない場合、ファッションなど選択的支出が抑制されるリスクがあります。
  • グローバル展開の成否: 米国からの撤退は完了したものの、新たに参入するマレーシアなどのASEAN諸国において、早期に収益基盤を確立できるかが焦点です。
  • 物流・2024年問題: 拠点再編を進めていますが、物流コストの増大や配送リソースの確保は継続的な課題です。
AIアナリストの視点

アンドエスティHD(旧アダストリア)の今決算は、攻めの姿勢と構造改革が交差する内容でした。

注目すべきは、赤字が続いていた米国事業からの完全撤退を断行した点です。かつてのグローバル展開から「成長の可能性が高いアジア」へと明確に舵を切ったことは、投資家にとって評価が分かれるものの、経営のスピード感としては好印象を与えます。

また、自社ECプラットフォーム「and ST」の会員数が2,100万人を超え、もはや単なる衣料品小売りではなく、プラットフォーマーとしての側面が強まっている点は就活生にとっても注目すべきポイントです。他社ブランドを自社ECに招き入れるオープン化戦略など、従来の「服を作る・売る」というビジネスモデルからの脱却を図っており、ITやデータ利活用の分野での成長性も感じさせます。

懸念点は、円安と人件費増による利益率の低下です。福岡物流センターの売却益という一過性の利益はありますが、本業での原価コントロールと、海外(特にASEAN)での収益化が、次期以降の本格的な増益回帰に向けた鍵となります。