ユニ・チャーム・2025年12月期通期、売上高4.4%減の9,452億円——中国・インドの逆風で減益も、次期は初の1兆円超えを計画
売上高
9,453億円
-4.4%
通期予想
1.0兆円
営業利益
1,089億円
-21.4%
通期予想
1,360億円
純利益
652億円
-20.3%
通期予想
865億円
営業利益率
11.5%
ユニ・チャームが12日に発表した2025年12月期連結決算は、売上高が前期比 4.4%減 の 9,452億6,800万円 、コア営業利益が同 21.4%減 の 1,088億8,400万円 と減収減益となった。主力のアジア市場、特に中国における風評被害や競争激化に加え、インドの税制改正に伴う約 69億円 の評価損失を計上したことが利益を押し下げた。しかし、会社側は次期を第13次中期経営計画の初年度と位置づけ、売上高 1兆100億円 と 過去最高の更新 を目指す強気の姿勢を示している。
業績のポイント
当連結会計年度の業績は、主要市場であるアジア圏での苦戦が鮮明となった。売上高は 9,452億6,800万円 (前年比 4.4%減 )、親会社の所有者に帰属する当期利益は 652億1,200万円 (同 20.3%減 )と沈んだ。主な要因は、中国における処理水問題に関連した風評被害の継続と、インドでの物品・サービス税(GST)制度改正に伴う 6,920百万円 の評価損失計上である。
利益面では、アジア地域でのeコマース向けマーケティング投資や激しい価格競争が収益を圧迫した。また、インドネシアや中国の子会社において、競合激化による収益性低下を背景に合計 6,015百万円 の 減損損失を計上 したことも響いた。一方で、日本国内や中東、北米市場は堅調に推移しており、地域ごとの明暗が分かれる結果となった。
| 項目 | 2024年12月期(実績) | 2025年12月期(実績) | 前期比 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 9,889億円 | 9,452億円 | △4.4% |
| コア営業利益 | 1,384億円 | 1,088億円 | △21.4% |
| 親会社株主帰属当期利益 | 818億円 | 652億円 | △20.3% |
| 1株当たり当期利益 | 46.41円 | 37.30円 | △19.6% |
業績推移(通期)
セグメント別動向
主力セグメントであるパーソナルケア事業は、売上高 7,744億2,800万円 (前年比 6.3%減 )、コア営業利益 831億9,700万円 (同 25.0%減 )と大幅な減益となった。特に中国市場において、出生数減少によるベビーケア商品のダウントレード(低価格品へのシフト)や、前述の風評被害による販売機会の喪失が大きく影響した。一方で、国内の大人用排泄ケア用品は健康寿命延伸への意識高まりから好調を維持し、中東でも高付加価値商品の展開により高い成長を継続している。
ペットケア事業は、売上高 1,560億8,400万円 (前年比 5.0%増 )と増収を確保したが、コア営業利益は 240億6,700万円 (同 6.9%減 )となった。国内では猫用おやつ「銀のスプーン」などの高付加価値ラインアップが寄与し、北米でもeコマース向け商品拡充が進んだ。利益面では原材料価格の影響や、中国・東南アジアでの積極的な経営資源投入が先行した形だ。
| セグメント名 | 売上高 | 前年比 | コア営業利益 | 前年比 |
|---|---|---|---|---|
| パーソナルケア | 7,744億円 | △6.3% | 831億円 | △25.0% |
| ペットケア | 1,560億円 | +5.0% | 240億円 | △6.9% |
| その他 | 147億円 | +3.9% | 16億円 | △6.9% |
| セグメント | 売上高 | 構成比 | 営業利益 | 営業利益率 |
|---|---|---|---|---|
| パーソナルケア | 7,744億円 | 82% | 832億円 | 10.7% |
| ペットケア | 1,561億円 | 17% | 241億円 | 15.4% |
| その他 | 148億円 | 2% | 16億円 | 11.0% |
財務状況と資本政策
財務基盤については、自己資本比率が前期末の62.3%から 65.0% へと向上し、引き続き盤石な状態を維持している。総資産は 1兆2,231億円 と前期末から 167億円 減少したが、これは借入金の返済や有形固定資産の減少によるものである。キャッシュフロー面では、営業活動により 1,314億円 のキャッシュを創出しており、投資や株主還元への原資を十分に確保している。
株主還元については、24期連続の増配 を決定した。2025年12月期の年間配当は 18円 (株式分割考慮後)とし、次期2026年12月期はさらに 4円増配 の 22円 を予定している。また、上限 190億円 (3,000万株)の 自己株式取得 も併せて決議した。総還元性向50%以上を目標に掲げ、資本効率の向上と株主への利益還元を一段と強化する方針だ。
通期見通し
2026年12月期は、売上高 1兆100億円 (前期比 6.8%増 )、コア営業利益 1,360億円 (同 24.9%増 )と、V字回復による 過去最高業績の更新 を見込む。原材料価格の落ち着きと、これまでの原価低減努力が結実する見通しだ。特に「アジア事業の回復」を成長ドライバーに据え、中国でのデジタルマーケティング強化や、インドでの生産体制拡充、新規参入したペットケア事業の加速を狙う。
| 項目 | 2025年12月期(実績) | 2026年12月期(予想) | 増減率 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 9,452億円 | 1兆100億円 | +6.8% |
| コア営業利益 | 1,088億円 | 1,360億円 | +24.9% |
| 親会社株主帰属当期利益 | 652億円 | 865億円 | +32.6% |
リスクと課題
今後の懸念材料として、以下の要因が挙げられている。
- 中国市場の不透明感: 景況感の悪化や出生数減少に伴う需要回復の遅れ、および激しい価格競争の継続。
- 地政学リスクと関税政策: 米国における追加関税政策など、各国の通商政策がサプライチェーンや輸出に与える影響。
- 為替変動: 次期予想の前提レートを1ドル=150.0円、1中国元=21.5円としており、円高に振れた場合の収益目減りリスク。
- 原材料価格: 原油価格やパルプ価格の再騰騰による製造コストの上昇。
今回の決算は、中国での「風評被害」とインドの「税制改正」という二つの大きな外部要因が直撃した形です。特に営業利益の2割減は、成長株として期待されてきた同社にとって厳しい内容に見えます。
しかし、注目すべきは資本政策の強気さです。減益決算でありながら24期連続増配を貫き、さらに190億円もの自社株買いを発表したことは、次期の「売上1兆円」計画に対する経営陣の強い自信の表れと受け取れます。
- 強み:日本・中東・北米の好調さと、圧倒的なキャッシュ創出力(DOE指標の導入など還元意識が高い)。
- 懸念点:中国依存からの脱却スピード。ベビーケアから大人用・ペット用へのシフトを、アジア全域でどれだけ早期に実現できるかが焦点となります。
就活生にとっては、同社が提唱する「アジアのV字回復」が単なる願望か、緻密な戦略に基づくものか、今後の新中期経営計画の進捗を注視する必要があります。
