花王・2025年12月期通期、営業利益11.9%増の1,641億円——37期連続増配と株式分割を発表、化粧品事業が大幅改善
売上高
1.7兆円
+3.7%
通期予想
1.8兆円
営業利益
1,641億円
+11.9%
通期予想
1,820億円
純利益
1,201億円
+11.4%
通期予想
1,300億円
営業利益率
9.7%
花王が5日に発表した2025年12月期連結決算(IFRS)は、売上高が前期比 3.7%増 の 1兆6,886億円、営業利益が同 11.9%増 の 1,641億円 となった。原材料価格の高騰が続く一方で、高付加価値製品の投入や適切な価格改定、さらに構造改革を進めた化粧品事業の収益改善が大きく寄与した。同社はあわせて 37期連続増配 となる年間156円(分割前換算)の配当予想と、投資家層の拡大を目的とした 1対2の株式分割 を発表し、積極的な株主還元姿勢を鮮明にしている。

業績のポイント
花王の2025年12月期は、不安定な外部環境を跳ね返し、増収増益 で着地した。売上高は前期比 3.7%増 の 1兆6,886億円 となり、営業利益は 11.9%増 の 1,641億円 を確保している。世界的なサプライチェーンの混乱や調達コストの上昇が続いたものの、日本国内での賃上げに伴う緩やかな内需回復や、海外市場での底堅い生活関連消費が追い風となった。
利益面では、中期経営計画「K27」に基づく構造改革の効果が顕著に現れている。特に、これまで苦戦が続いていた化粧品事業において、ブランドの集約と効率的な投資が実を結び、利益率が大幅に向上した。また、原材料価格の上昇に対して、独自の付加価値を持った製品を適切な価格で市場に浸透させたことで、「稼ぐ力」の強化 が進んでいる。
親会社の所有者に帰属する当期利益は前期比 11.4%増 の 1,201億円 となった。通期の1株当たり利益(EPS)は 260.30円 に上昇し、ROE(親会社所有者帰属持分当期利益率)も前期の10.5%から 11.3% へと改善した。これにより、同社が掲げる資本効率の向上と株主還元の両立が着実に進展していることが示された。
| 項目 | 2024年12月期(実績) | 2025年12月期(実績) | 前年比 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 1兆6,284億円 | 1兆6,886億円 | +3.7% |
| 営業利益 | 1,466億円 | 1,641億円 | +11.9% |
| 税引前利益 | 1,510億円 | 1,698億円 | +12.5% |
| 親会社所有者帰属純利益 | 1,078億円 | 1,201億円 | +11.4% |
業績推移(通期)
セグメント別動向
主力のハイジーン&リビングケア事業は、売上高 5,493億円(前期比 0.9%増)、営業利益 813億円(同 55億円増)となった。衣料用洗剤「アタック抗菌EX」シリーズの改良や高付加価値化が功を奏し、原材料高を吸収して利益を伸ばした。サニタリー製品では、中国市場におけるベビー用おむつの競争激化に直面したものの、国内のホームケア製品が堅調に推移し、セグメント全体での収益性を維持している。
ヘルスビューティケア事業は、売上高 4,329億円(前期比 2.1%増)、営業利益 391億円(同 47億円増)と伸長した。日本市場では新発売の高価格帯ヘアケアブランド「melt」や「THE ANSWER」が大きく寄与し、若年層を含む新たな顧客層の取り込みに成功した。スキンケア分野でもUVケア製品などのシーズン品が好調で、ブランド力の強化が利益成長に直結している。
特筆すべきは化粧品事業のV字回復である。売上高は前期比 7.2%増 の 2,616億円、営業利益は前期の37億円の赤字から 104億円の黒字 へと大幅に改善した。「Curél」や「KANEBO」など注力6ブランドへの集中投資 が奏功し、特に中国での流通在庫適正化が進んだことや、インバウンド需要を捉えた「SENSAI」の成長が収益を押し上げた。不採算ブランドの整理といった構造改革の効果が、明確に数字として表れている。
ケミカル事業は、売上高 4,515億円(前期比 7.2%増)と増収を確保したが、営業利益は 302億円(同 55億円減)となった。油脂原料価格の上昇に伴う販売価格の改定を進めたものの、一部の産業用分野での需要減少や、原料価格変動の影響を完全に相殺するには至らなかった。しかし、半導体関連や情報材料向けの需要は堅調を維持しており、次期以降の回復が期待される。
| セグメント名 | 売上高(億円) | 営業利益(億円) | 利益率 |
|---|---|---|---|
| ハイジーン&リビングケア | 5,493 | 813 | 14.8% |
| ヘルスビューティケア | 4,329 | 391 | 9.0% |
| 化粧品 | 2,616 | 104 | 4.0% |
| ケミカル | 4,515 | 302 | 6.7% |
| セグメント | 売上高 | 構成比 | 営業利益 | 営業利益率 |
|---|---|---|---|---|
| ハイジーン&リビングケア | 5,493億円 | 33% | 813億円 | 14.8% |
| ヘルスビューティケア | 4,329億円 | 26% | 391億円 | 9.0% |
| 化粧品 | 2,616億円 | 16% | 104億円 | 4.0% |
| ケミカル | 4,515億円 | 27% | 302億円 | 6.7% |
財務状況と資本政策
2025年12月末時点の総資産は、前期末比78億円増の 1兆8,751億円 となった。有形固定資産や棚卸資産が増加した一方で、自己株式の取得により現金及び現金同等物は344億円減少した。親会社所有者帰属持分比率は 56.7% となり、依然として強固な財務基盤を維持している。
資本政策においては、極めて積極的な株主還元を継続している。2025年中に総額 800億円の自己株式取得 を実施し、発行済株式の消却も完了させた。配当についても、2025年12月期の年間配当を前期比2円増の 154円 とし、さらに2026年12月期は実質的な 37期連続増配 となる156円(株式分割前換算)を予定している。
また、同社は2026年7月1日付で 1対2の株式分割 を実施することを決定した。これは、1株あたりの投資金額を引き下げることで個人投資家の売買を容易にし、さらなる投資家層の拡大を図るための戦略的な判断である。連続増配、自社株買い、株式分割を組み合わせることで、株主価値の最大化を追求する姿勢を市場にアピールしている。
リスクと課題
花王が直面する今後の主なリスクとして、第一に 原材料価格の変動 が挙げられる。天然油脂や石油化学原料の価格推移は、主力製品の製造コストに直結するため、依然として不透明な要素である。第二に、為替相場の影響 である。2026年12月期の前提レートは1ドル150円と設定されているが、円高方向へ大きく振れた場合には、海外利益の目減りや輸出採算の悪化につながる恐れがある。
さらに、地政学リスクの長期化に伴うサプライチェーンの混乱や、日本国内における物価高による 消費マインドの抑制 も懸念材料だ。特に国内市場では生活者の節約志向とこだわり消費の「二極化」が進んでおり、高付加価値戦略がどこまで浸透し続けられるかが鍵となる。また、中国市場における現地ブランドとの競争激化や景気動向も、引き続き重要な経営課題として認識されている。
通期見通し
2026年12月期の通期連結業績は、売上高が前期比 3.6%増 の 1兆7,500億円、営業利益が 10.9%増 の 1,820億円 となる増収増益を見込んでいる。すべての事業セグメントで増収を計画しており、特に化粧品事業とヘルスビューティケア事業が成長を牽引する見通しだ。同社は「グローバル・シャープトップ戦略」を加速させ、特定のカテゴリーで世界トップシェアを狙う方針を掲げている。
| 項目 | 2025年12月期(実績) | 2026年12月期(予想) | 増減率 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 1兆6,886億円 | 1兆7,500億円 | +3.6% |
| 営業利益 | 1,641億円 | 1,820億円 | +10.9% |
| 親会社株主帰属純利益 | 1,201億円 | 1,300億円 | +8.3% |
| 営業利益率 | 9.7% | 10.4% | +0.7pt |
今回の決算で最も注目すべきは、長らく課題とされていた「化粧品事業の復活」が数字として証明された点です。かつてのブランド乱立状態から、「Curél」や「KANEBO」などの強いブランドへ資源を集中させる戦略が明確に機能し始め、営業利益100億円の大台を回復させたことは、今後の成長物語において大きな転換点となるでしょう。
また、投資家視点では「37期連続増配」という国内屈指の記録を更新しつつ、1対2の株式分割に踏み切った点が極めてポジティブです。花王の株価は1株数千円と、個人投資家にとってはややハードルが高かった面もありましたが、今回の分割により「より開かれた銘柄」としての地位を確立しようとする意図が読み取れます。
懸念点は、やはり中国市場の不透明感と原材料コストの再燃ですが、高付加価値製品へのシフトと価格改定の成功により、以前よりも外部環境への耐性は高まっていると感じます。中計「K27」の達成に向け、収益構造が一段上のフェーズに入ったと言える決算内容でした。
