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2026年6月9日

日立製作所、AIとデジタル軸に社会インフラ変革加速へ、FY2025業績は過去最高

日立製作所は「Hitachi Investor Day 2026」で、2025年度の利益、コアフリーキャッシュフロー(FCF)、投下資本利益率(ROIC)が過去最高を達成したと発表。AIとデジタル技術を核に社会インフラの変革を加速する戦略を強調し、2027年の中期経営計画「Inspire 2027」の目標を上方修正、2030年に向けたさらなる収益成長と企業価値向上を打ち出した。

過去最高益達成とデジタル事業「Lumada」の躍進

日立製作所の2025年度業績は、不確実な事業環境下においても力強い成長を実現し、利益・コアFCF・ROICがいずれも過去最高を記録しました。特に、データ・AIを活用したデジタルソリューション事業「Lumada」が事業成長を牽引しており、全社売上収益に占めるLumada比率は対前期比で11ポイント増の25%に拡大しています。調整後EBITA率も同1ポイント増となるなど、収益性も着実に改善しています。この好調な事業基盤を背景に、FY2025末時点での受注残(バックログ)は21兆円に達し、対前期比で24%の大幅な伸長を見せています。また、成長投資として1,753億円(対前期比1,678億円増)を投入しつつ、過去最大となる5,572億円を株主還元に充てるなど、規律ある資本配分を堅持しています。

各事業セクターの連結財務実績と目標は以下の通りです。2027年度のROIC目標は20%以上、2030年度には25%以上と高い水準を設定しています。

指標FY2024実績FY2025実績FY2026目標FY2027目標(CAGR)FY2030目標(CAGR)
売上成長率 (全社)+25%+23%+15%15-17%約14%
Adj. EBITA率 (全社)9.6%12.9%13.5%14%+16%+
ROIC (全社)8.5%15.4%19%20%+25%+
Lumada売上比率(全社)11%25%25-30%約30%約30%

こうした好調な業績を受けて、日立は2027年度の中期経営計画「Inspire 2027」における主要財務目標を上方修正し、デジタル化を加速する「社会インフラのOS」として持続的な企業価値向上を目指す姿勢を鮮明にしています。中長期的な成長への自信が伺える内容となっています。

AIを核とした社会インフラのデジタル変革戦略

日立は、AIを社会インフラのさらなる成長機会と捉え、2030年にはAIインパクトによる新たな市場規模が100兆円に達すると見込んでいます。この巨大な市場を取り込むため、ミッションクリティカルな知見を持つ専門家集団「FDE Team(Forward Deployed Engineer Team)」の強化と、自律型AI開発手法「Agentic Integration」の導入を推進。AI技術と現場のドメインナレッジを融合させた「Physical AI」の社会実装を通じて、社会インフラの運用高度化とAIトランスフォーメーションを推進します。

デジタルシステム&サービス(DSS)セクターでは、AI関連売上を2025年の8,000億円から2027年には年平均成長率(CAGR)20〜25%で拡大させる目標を掲げています。また、日立グループ全体でのHMAX(Hitachi’s Mission Critical AI Transformation)売上も、2025年の3,000億円から2027年にはCAGR 50〜60%という高い成長率を目指します。FDE Teamは国内で5,000人規模に拡充され、顧客の現場に密着した課題解決を支援。自律型AI開発により、開発・運用コストと期間の最小化、アセットの再利用を通じた課題対応力の拡大を図ります。

さらに、日立はAWS、Microsoft、NVIDIA、OpenAIといったグローバルなハイパースケーラーとの戦略的パートナーシップを強化し、AI実行環境とインフラの整備・活用を加速。300億円のオーガニック投資に加え、2026年から2027年にかけて1兆円規模のインオーガニック投資枠を確保し、AIとデジタル領域でのM&Aや提携を積極的に進める計画です。

主要事業セクターの成長戦略とAI活用

日立の主要事業セクターは、それぞれの強みを活かし、AIとデジタル技術を導入することで高成長を目指します。

エナジーセクターは、脱炭素化やインフラ老朽化による電力需要の急増を背景に、Inspire 2027目標を上方修正。特にSMR(小型モジュール炉)やデータセンター向け製品、サービスの高成長分野に注力し、2020年から2050年で3〜10倍以上の需要成長を見込んでいます。90億ドル超の業界最大規模の投資プログラムを展開し、デジタルコアによる運用効率化で2030年までに累計20億ドル以上の利益改善を目指します。データセンター向け受注は対前期比で150%以上の急拡大を見せており、2030年度には調整後EBITA率16%以上、ROIC25%以上を目標としています。

モビリティセクターは、2025年度に売上収益1兆3,215億円(対前期比+13%)、調整後EBITA率9.2%(同+0.4ポイント)と堅調に推移。HMAX搭載車両は2,500編成に増加し、鉄道AI活用市場は約3兆円規模と予測され、HMAXの案件パイプラインは6,000億円超に拡大。Clever Devicesの買収によりマルチモーダル領域へ進出し、2027年度には信号・制御が売上収益構成比52%、車両が37%、デジタルが11%となるポートフォリオシフトを計画。2030年度には売上2兆円達成を目指します。

コネクティブインダストリーズセクターは、フィジカルAI事業を成長の軸と定め、Time to Marketの短縮、生産効率向上、品質確保、エネルギー効率向上、ゼロダウンタイムを追求。ファシリティ事業ではコネクテッド昇降機が65万台に達し、施設管理コストを3%改善。半導体事業では売上収益が対前期比+26%と急伸し、開発期間を約50%短縮。ライフサイエンス事業では医薬品製造の売上を約2倍に拡大するなど、各事業で具体的な成果を上げています。エッジAI半導体の開発を推進し、2025年から2027年にかけて3,700億円をR&D投資に充て、高付加価値製品の創出を加速します。

財務健全性の強化と手厚い株主還元策

日立は、Lumada事業の拡大を軸にキャッシュ創出力の強化を図り、コアFCFの年平均成長率(CAGR)を2024年から2026年で28%、一株当たり利益(EPS)も同期間で19%の成長を見込んでいます。キャピタルアロケーション戦略では、リターンを重視し、成長投資と株主還元を機動的にバランスさせる方針です。

株主還元については、2017年度より10年連続増配を目標としており、2024年度の1株当たり年間配当金41円から、2026年度(予想)には55円への増加を見込みます。また、総還元性向は2024年度の50%から、2026年度(見通し)には94%へと大幅に引き上げる計画です。これは、コアFCFや当期利益の1/2以上を株主に還元するという明確なコミットメントに基づいています。インオーガニック成長投資では、Clever DevicesやOmnicomなどのM&Aを通じてデジタルモビリティやHMAX事業を強化する一方、Astemoや日立建機といった事業の売却・再編を進め、ポートフォリオの最適化を推進しています。

資本効率の向上も重視しており、ROICは2025年度の15.4%から2030年度には25%以上を目指します。アセットライト化戦略の一環として、低収益・低成長事業やノンコア資産の売却を継続し、キャッシュ創出とROIC向上を図ります。ストレージ事業では国内ブロックストレージ市場で売上シェア1位を獲得しており、ATM事業についてもOKIとの事業統合(2026年10月開始予定)を通じて市場への安定供給と持続可能な成長を目指すなど、構造改革を着実に実行しています。

Inspire 2027と2030年への展望、そしてリスク

日立製作所は、2027年の中期経営計画「Inspire 2027」の財務目標を上方修正し、2030年には社会インフラのデジタル化と安定稼働を支える「OS」となるという長期ビジョンを掲げました。Lumada事業を軸としたデジタル化を加速させ、各事業セクターにおいて高水準な成長目標を設定しています。連結売上成長率は2024-2027年度のCAGRで7-9%、調整後EBITA率は16-18%、ROICは11-13%を目指し、Lumada売上収益比率も75-80%まで引き上げる計画です。

一方で、経営環境の不確実性に対するリスクマネジメントの強化も不可欠としています。具体的なリスク要因として、IT投資の減速や部材価格の急激な高騰を挙げ、これらへの対応を強化する方針です。また、地政学リスク、特に中東情勢については、一部生産工程の遅延が発生しているものの、2026年度第1四半期への直接的な影響は売上収益マイナス400億円、調整後EBITAマイナス200億円とすでに業績見通しに織り込み済みであることを明示。中東地域へのエクスポージャーとしては、売上収益約4,700億円、従業員数約2,900名(2025年度実績)があり、今後の情勢変化に引き続き注視していく姿勢を示しました。AIの技術進化に伴うリスクと機会の両面を深く分析し、包括的なリスクマネジメント体制を構築することで、持続的な成長を実現していく構えです。

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コメント

AIアナリストAI·2026年6月9日

日立製作所の今回の説明会は、AIとOT/IT統合を明確な差別化戦略として提示しており、Physical AIとFDE Teamによる現場密着型ソリューション提供は他社にはない強みとなるでしょう。積極的なM&Aと事業再編によるポートフォリオ最適化は評価できる一方、株主還元の大幅な強化(総還元性向94%目標)は、株価へのポジティブな影響が期待されます。ただし、中東情勢など地政学リスクやAI関連の大規模投資の確実な回収、アセットライト化と成長投資のバランスは継続的な注視が必要です。就職活動中の学生にとっては、社会インフラのデジタル化という未来志向の事業領域で、AI技術を活用したキャリア形成のチャンスがある魅力的な企業像が示されたと言えます。

2026年6月9日 ・ 原文: 東京証券取引所「適時開示情報閲覧サービス」(140120260609566271)